第25話 俺が俺である事には変わりない


「攻撃されるのが望みであるのならばそうしてやろう」

「ぐふっ!?」


 俺がテレサの猛攻を対処しきれないと判断したのか、見え透いた挑発をしてくるので俺は身体強化と反応速度強化両方をかけると、テレサの攻撃を避け、刀の柄の頭でテレサの鳩尾を突いてやると、テレサはくの字に曲がり、鈍い声を口から漏らす。


「何か勘違いしているようなのだが、お前ごときの攻撃を掻い潜って反撃する事ができないと思っているのであれば流石に舐めすぎだろう。そもそもお前は俺が防御用に張った防御壁を壊すどころか傷一つ付ける事ができない時点で力量の差をある程度は理解してもらえると思ってこちらからは手を出さなかっただけだというのに……」

「……ろす……っ」

「はい? 聞こえねぇよ。喋るのならばちゃんと俺にも聞こえるように喋れよ。本当はこのままとどめを刺しても良かったところをわざわざこうして待ってやっているんだから、それくらいの配慮はして欲しいね」

「絶対殺してやるっ!!」

「……そう来なくちゃっ」


 テレサは鳩尾を抱えて膝を突き、痛みで動けないのかそのまま固まってしまうので、俺はそんなテレサへとねちねち口撃をして、今度は俺がテレサの感情を逆なでしてやる。


 するとテレサは親の仇を目の前にしたかのように怒りの感情を隠す事もせず、俺に向かって『絶対殺してやります』と宣言するではないか。


 そんなテレサの周囲からは魔力が怒りからか放出され、その影響か温度が一気に下がり地面には霜柱が立ち始める。


 その光景を見た俺は思わず口角が上がるのが分かる。


 鳩尾に一撃を与えた時に特別昇級試験を終わらせても良かったのだが、それでは面白くないし『不意を突かれただけ』だのなんだのと因縁を付けられて面倒くさい事になるのも嫌なので、テレサに本気を出させたうえで潰した方が良いだろう。それに次は序列一位に挑む事を考えれば序列三位であるテレサの実力をちゃんと知っておく必要もあるだろう。


 というのは表向きの言い訳であり、本心から言えばここまで俺様の事をコケにしたテレサのプライドを粉々に砕いてやりたいというのが本音である。


 前世の俺であれば恐らくこんな感情は抱く事はなかったのだが、この感情は恐らく今世のものであろう。


 そもそも前世の記憶と価値観を思い出したからと言って性格まで変わる訳ではないのだ。


 確かに前世にかなり影響されて引っ張られているのは確かなのだが、俺が俺である事には変わりない。


「貴族風情がこの私を見下す事は絶対に許さないっ!! この私を本気にさせた事を死後の世界で後悔させてやろうっ!!」

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