第22話 絶世の美女
「そう言われましても……」
しかし、そこまで言っても受付嬢は困った表情で顔を真っ青にして脂汗をかきつつも首を縦に振らずに、涙目になりながら渋るではないか。
おそらく彼女の中では俺は間違いなく負ける、それも高確率で死ぬかもしれないと思っているのだろう。
そうなれば、例えここで俺が『俺が特別昇級試験を許可させたので受付嬢は悪くないので懲罰などはやめるように』というような一筆とサインを書いたところで、俺が万が一死んでしまったら何があるか分かったものではないと判断しているのだろうし、受付嬢のその判断は正しいと俺も思う。
死人に口無しというように、万が一特別昇級試験を許可した受付嬢に何かあった場合、俺が死んでいては受付嬢を護ってくれるのは俺が書いた一筆とサインのみであり、死んだ俺が受付嬢を護る事はできないのだから。
早い話がギルド側で問題にされた場合どうしようもないという事である。
いくら受付嬢にとって不利益になるような事は止めるようにとした所でやりようはいくらでもあるということである。
そしてギルド側でやりようはいくらでもあるという事は貴族側、俺の親族側もやりようはいくらでもあるという事である。
表向きの理由を『特別昇級試験を許可した受付嬢への制裁』という体にしなければ良いのだから。
さて、どうしたものか。
「どうしたんだ? 受付嬢が震えているではないか?」
今にも泣き出しそうになり震えている受付嬢に申し訳ないと思いつつ、俺もここで引くつもりはないので困っていると、誰かが俺たちに声をかけて来るではないか。
「テ、テレサ様っ!!」
そして、受付嬢が声をかけて来た者の顔を確認した瞬間『助かったっ!!』という表情へと一気に変わり、安堵するのが分かる。
テレサ……なるほど、名前しか知らなかったがこいつが現在冒険者ランキング三位の戦乙女の雷と大層な二つ名が付けられているテレサ・フェルディナン・ダルトワか。
青みがかった銀髪を腰まで伸ばし、その顔は絶世の美女と呼んでも納得しそうな程の美人である。
一見その美しさに見惚れそうになるのだが、彼女は確かに強いと確信できるオーラを感じ取ることができる。
「なるほど、彼が私に『特別昇給試験官』を受けると言っている貴族の愚息か。大丈夫だ。私がこのバカを殺してしまう可能性が高いから困っているのだろう? ならば安心して特別昇級試験の許可を出していただいて構わない。それを聞いていない状態であれば間違いなく勘違いした馬鹿は殺していただろうが、そういう理由ならばちゃんと殺さずに模擬戦を終えやろうではないか」
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