第21話 権力をここぞとばかりに行使する



 その特別昇級試験の内容なのだが、そのランクの試験官と模擬戦をして判断をするというものであり、勿論試験官に勝利すれば問題なく特別昇級試験合格判定なのだが、負けた場合でも試験管の判断によって合格する場合もある。


 そして、今俺が依頼しているのはその中でも一番難しい、ランカーと言われる者たちへ模擬戦をするという方法をギルドの受付嬢へ依頼している所である。


 そもそもこのランカー達への模擬戦が難しいとされるのが、倒すことが難しいというのもあるのだが、今自分がいる街にそのランカーがいるとは限らないという事である。


 正直な話をすると冒険者ランキング一位の者と模擬戦を行い、その冒険者ランキング一位という称号を奪いたかったのだが、今はこの街にランカーがいる事を喜ぶとしよう。


 ランカーにさえなる事ができれば、上の順位を持つランカーに模擬戦を依頼する事ができ、依頼された者はそれを断る事はできない為、ここで俺がランカーになるというだけでも一位への切符を手にするようなものである。


「あぁ、構わない。そもそもこの俺様がランカーごときに負けるとでも思っているのか?」


 俺は受付嬢の言葉にそう返すと、スルーズとマリエルもうんうんと頷いてくれる。


「何バカな事をっているのですか。SランクならばまだしもBランクにもなっていない貴方がランカーの方と模擬戦をして勝てる訳がないでしょう。それどころか模擬戦と言えども死んでしまってもおかしくないレベル差ですよ。ここ最近は確かに順調に特別昇級試験を使って冒険者ランクを上げて来ていますが、それで自分の力を過信しすぎて勘違いしてしまうようでは、流石にランカーへの特別昇級試験を許可する事はできません……っ!」


 しかしながらこの受付嬢は俺が特別昇級試験でランカーへ模擬戦を依頼する事を拒んでくるではないか。


 確かに、俺からしてみても客観的に見れば受付嬢の言っている事は正しく、そして断る理由としても十二分に正しいだろう。


 これで特別昇級試験を許可して俺が死にでもしたら、受付嬢は一生許可した事を後悔して行くだろうし、冒険者を護るという観点でも間違ってはいない。


「それは、我がクヴィスト家の言葉を聞けないというのか?」


 なので俺は貴族としての権力をここぞとばかりに行使する。


「ク、クヴィスト家……ですって……っ!?」

「良いか? これは願いではなく命令だ。特別昇級試験を許可しランカーとの模擬戦を手配しろ。まぁ、貴様が言うように万が一この俺様が死ぬような事があればお前に危害が行かないよう『この特別昇級試験は俺の命令によるもので、許可したギルド職員の責任ではない』と一筆書いてやるよ」

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