第12話 まだ幼い子供



 ようはこいつらは弱者をいたぶり、その命を弄ぶ事に快楽を得ているのだろう。


 だからこそ人間界でしか使えないような財産などには興味が無く、単なる遊び感覚で命を奪っていると思えば納得もできる。


 しかしながら納得ができるからと言って許す事ができるかとまた別問題である。


 もしこいつ等にも、この村を襲うだけの大義名分が有るのだとしたら、もしかしたら見逃していたのかも知れないが、流石にただただ遊び感覚で虐殺したのだとしたら見逃す事などできるはずが無かろう。


 俺はマリエルに目で合図をしてオークの首をダンジョンのボスを倒した時に低確率で獲得できる黒い刀を抜刀して切り落とし、マリエルは同じく黒い刀で下っ端の身体を縦半分、竹割のように切り殺す。


「……クズが」


 そして普段のマリエルからはまず聞く事は無い汚い言葉が聞こえてくる。


 そう言えばマリエルは幼い頃に魔物ではないものの山賊に襲われた村の生き残りをお父様が運良く拾った経緯があったなと、ゲームのシナリオで明かされた過去を思い出す。


 そんなマリエルから殺される程の事になるゲームの俺はどれだけ酷い事をしたのか想像に難くない。


「とりあえず生き残りが居ないか探そうか」

「……そ、そうですねっ!」


 とりあえず、まだ生き残りがいるかもしれないので物思いにふけっているマリエルへ声をかけて生存者を探す事にする。


「……酷いな…………っ」

「……っ」


 想像と覚悟はしていたのだが、実際見るのとは別問題である。


 目の前に広がる惨劇を見て、思わず胃の中を吐き出しそうになるのだが何とかグッと堪え、生存者がいないか探し続けるのだが、生きている者は一向に見つからない。


 もし居たのであれば既に俺達の前に自ら出て来てもおかしくはないのだが、それが無いという事は全滅している可能性が高いという事なのだろう。


「最後に井戸を確認しようか……」

「……はい」


 そして俺たちは小さな村を一通り確認し終え、最後に村の真ん中にある井戸の中を確認する事にする。


 そこには、恐怖に縮こまっているまだ幼い子供がいるではないか。


「………すまない」


 その恐怖におびえる子供を見て、俺は思わず謝罪の言葉を口にしてしまう。


 もう少し早く助けに来ていれば、もっと異変に早く気付いていれば、もしかしたらこの子の家族だけでも助ける事ができたかもしれない。そんな罪悪感に押しつぶされそうになる。


「……あっ」

「お、おいっ!!」


 すると、俺の声が聞こえたのか子供は怯えながらも上へ顔を向けて俺の方を見上げると、井戸の中を覗き込んだのが魔物ではなく人間である事に心底安堵したのか、そこで気を失ってしまったようで急いで救出するのであった。

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