第7話 一旦は信じる事にいたしましょう
「……では、私の家族を助けてくれませんか? ……どうせ無理でしょう? 平民には生きる価値が無いというのが口癖でしたもの。心を入れ替えたとは言っても私の事は道具としてしか見ていないのでしょう? 今まで雑に扱ってきた分、これからは丁寧に扱う程度の変化はしたのでしょうが……平民を人と思えないのであれば結局──」
「分かった。君の家族を助けると誓おう」
「──根本的な解決には……へ?」
俺が、マリエルから憎まれ続けても良いし、それが分かっても罰を与えないと言うと、堰を切ったように罵倒をし始める。
しかし、その罵倒に関しては今までしてきた自分自身の行いを鑑みれば妥当であり自業自得であるしっかりと受け入れると共に、普段感情を表に出さないマリエルがこれ程感情的になるまで辛い思いをさせていたのだと思うと、より一層申し訳ないと思って来る。
そして、マリエルの望みが『マリエルの家族を助ける事』であると言うのならば、自分にできる範囲でマリエルの家族を助ける事くらい造作も無い事である。
むしろその位で許してくれると言うのであれば安いものだろう。
そう思った俺は、まだ俺の事を罵倒し続けるマリエルの言葉を遮って、マリエルの家族を助けると言う。
するとマリエルは、まさかこの俺がマリエルの家族を助けるとは露ほども思っていなかったのであろう。まるでハトが豆鉄砲を食ったような表情して固まるではないか。
「だから、俺ができる範囲になってしまうが……マリエルの家族を助けると言った。それが望みなのだろう?」
「……何が目的なのですか? まさか私の身体……いえ、平民を人と思っていないロベルト様が平民である私の身体を求めるはずが無いですし……」
「何も目的は無い。あるとするのであれば今までマリエルに対しておこなってきた非道な態度への贖罪だな」
「…………」
そんなマリエルに対して再度マリエルの家族を助けると言うと、再度無言で俺の事を見つめてくるのだが、疑いの視線であった前回と違い、今回は本当に信じていいかどうか迷っているような視線を向けてくる。
「いきなりこんな事を言われて信じろと言う方が、無理があるのは理解しているから信じてくれとは言わないが、その代わりこれからも俺の側で側仕えメイドとして働いてもらい、俺の事を間近で見ていて欲しい。駄目か?」
「……分かりました。一旦は信じる事にいたしましょう」
「あぁ、ありがとう……ってどうしたっ!?」
「いえ、殺されると思っておりましたので、一旦は助かったのだと思った瞬間に足に力が入らなくなっってしまいました。直ぐに元に戻ると思いますので、私の事は気にせずにロベルト様は休憩なさってください」
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