第4話 男子、三日会わざれば刮目して見よ



「……何故お爺様の所へ行かなければならないのだ? 確かに婚約破棄をされて傷心しているであろう今、学園へ登校するというのも酷というもの……しかしながら、それであれば別にここでも良いだろう」


 そう、俺が考えた案とはお爺様へ行くという事である。


 しかし、そもそもお父様はお爺様の事があまり好きではないと言うか、何かと口煩いので鬱陶しいと思っているのだろう。


 お爺様も息子可愛さ故の行動であるのだろうが、それを嫌がるお父様の気持ちも理解できる。


 なのでお父様的にはできれば俺にここに居て欲しいようだ。


「いえ、婚約破棄をされて傷心している為お爺様の所へ行きたい訳ではないのです」

「では、いったい何故わざわざ辺鄙な場所へと行こうとしているのだ?」

「それは、今回の婚約破棄で目が冷めたからです」

「ほう……というと?」

「今の自分は我儘ばかりで、他人の事まで考えられていなかった事に気付きました。そしてこのままではお父様みたいな立派な領主には慣れないと痛感した為、自分は一度親から離れて自分を見つめ直す期間が必要であると思ったからです」


 そして俺は取って付けたようなその場しのぎの言い訳をお父様へ告げる。


 しかしながら、俺はこれでお父様は俺をお爺様の所へ行く許可を出すと確信している。なぜならば『お父様のような立派な領主になる為に自らに課した科せである』という理由を聞いて、息子大好き両親が駄目だと却下できる訳がないからである。


「おぉ…………む息子よ……っ! 知らぬ間にこんなに大きくなって……っ!!」

「男子、三日会わざれば刮目して見よとも言いますし……子供の成長、特に思春期の男の子は、身体は言わずもがな心の成長も早いものですわね……っ!!」


 そして、そんな俺の発言を聞いたお父様とお母様は感動して涙を流し始めるではないか。


 こうなるであろう事は予め予測していたものの、こうして実際に泣かれてしまうと両親に嘘をついている自分の発言に少しばかり罪悪感を覚えてしまう。


 しかしながら、価値観が変わった事を成長と言うのであれば切掛けは婚約破棄ではなく前世の記憶を思い出した事ではあるのだけれども、あながち嘘ではないので許して欲しい。


「それで、お爺様の所へ夏季長期休暇を利用して長期滞在するのは駄目でしょうか?」

「何を言っておるっ!! 我が息子が一皮むこうと自ら頑張っている事を駄目だという訳がなかろうっ!!」

「えぇ、そうねっ!! 少しばかり寂しくはなりますけれども、それはそれで帰って来る時どれ程ロベルトが大きくなっているのか分楽しみでもありますものね」

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