第3話 最大限利用してやるだけ
「うん? どうした? 何か私に頼みたい事でもあるのかい?」
そう問いかける俺にお父様は優しい声音で何かあったのかと返事をする。
きっと俺が婚約破棄のダメージ引きずっているとでも思っているのだろう。
前世の記憶を思い出す前の俺であれば引きずるどころか逆恨みをして、その怒りから復讐をしようとした結果様々な方法で殺されてしまうのだが、今の俺からすれば婚約破棄をされても仕方がないと普通に思えてしまうくらいには自分はクズでしか無かったので『まぁ婚約破棄も自業自得だよな……』程度にしか感じる事が無い。
むしろ、これをきっかけに俺を殺したゲームの主要キャラクター達から距離を取る事ができる切掛けになると思えばむしろ好都合と言えよう。
そして俺は今からその切掛けを最大限利用してやるだけである。
というか、自分の息子が原因で婚約破棄をされたというのに、相手の心配ではなく息子を心配する時点でこの親にしてこの息子なのだろうなと思ってしまう。
やはりいけない事をすればその都度叱るというのは必要であると俺は思う。その結果がこの、俺という化け物が生まれてしまうのであれば尚更である。
「はい。お父様に頼みたい事が一つございます」
「ほう……。この私に頼みたい事とは一体何だね? 新しい婚約者であれば今すぐにでもこの私がお前の為に見繕ってあげようではないか」
「ええ。ええ。そうしましょう。そうしましょう。このままではロベルトちゃんが可哀そうで、わたくし、見ていられないわ……っ」
そしてやはりというか何というか、お父様は俺に新しい婚約者を見繕ってやると言って来るではないか。
この人たちは、領民の事も考えて領地経営ができているし俺に対しても優しく接してくれる所を見るに、決して悪い人たちではないという事は理解できるのだけれども、それが『身内に限り』という条件付きであるのが勿体ないなと思ってしまう。
その為領民の幸せの為であれば他の領地がどうなっても構わないと思っているだろうし、それと同時俺が幸せになるのであれば他人の子供が不幸になろうがどうでもいいという思考をしているのだろう。
領地経営に関しては報復を恐れてか何なのかは分からないのだが表だってそのような事をしてこなかったのだが、今思い返せばあの件は確かにちょっと……という行為が複数思い当たる。
とりあえず、そんな話はさておき今は自分の事である。
「いえ、そのような事ではなくて……今から夏季長期休暇の間だけでもお爺様の所で休みたいなと思いまして……」
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