16.どうやら、乗り間違えたようです
学園長の正体が、平行世界であるこの世界を調査しに来た調査団の団長であり、王弟陛下でもあったのは、私とアリスの中では常識だった。
その調査団の副団長であるシギン・バース。彼が学園長をこの世界の王にするために、暗躍しているのも、常識だ。
だから、学園長に確認していなかった。
この船は、あなたが乗っていた船ですか?と。
※
調査団は、団長が乗る船と副団長が乗る船の2隻で、この世界へ来ていた。全滅するリスクを減らすためだろう。
当時、この世界の王と調査団は戦争になった。
その時、副団長のシギンは裏で敵に回り、王と結託し、調査団を追い詰めた。
裏切り者と気付かせなかったシギンの進言により、学園長は撤退し、残った調査団の仲間たちと一緒に、回復ポッドで眠りについた。
学園長が回復ポッドから目覚めると、仲間は誰一人残っておらず、5000年もの時間が過ぎていた。戦争は神話となり、事実と異なる内容で広まっていた。
自分たちがこの世界にもたらしたナノマシンは、『魔法』として伝わっていた。
学園長は絶望し、この世界と心中することを選ぶ。
自分を殺す存在を育てるため、平行世界の技術を応用しダンジョンを作り普及させた。
※
これが『恋と禁忌のイデア2』のストーリーである。
学園長は、仲間が誰一人残っていないことを、シギンが何かしたと考えている。
それは、ダンジョンで会った時のセリフからもわかる。正解である。
学園長はシギンを警戒している。だから、確認していなかったのだ。
私とアリスは顔を見合わせ、やってしまったと察した。
「これ、使ったら気付かれる……」
「気づかれるねぇ……」
私たちのまとう空気がおかしいことに気付いたシェルリィがこちらに来た。
「どうしたの?」
目線で私が説明すると伝えアリスに頷く。
「えっと……、ここって学園長のものじゃないんだよ」
「え?じゃあ誰の?」
「シギン。学園長が眠っている間に、シギンの船と入れ替わってたの。学園長はそれに気づかないまま、今まで過ごしてた」
簡単に言えば、そういうことだった。
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