15.どうやら、学園長も脳筋だったようです

「さて、次は私が話そう」


 ショックから立ち直れていない私をスルーし、学園長が話し始める。


「アリスから転生者であることを打ち明けられ、君を助けるために協力したいと話があった後、すぐに今後の展開を考えた。君たちが話してくれたゲームのシナリオ、現実との差異、そして……シギンの目的。これらを考えた場合、ほぼシナリオ通りに進むと思われる」

「ゲームと現実の差を考慮してもですか?」

「そうだ。なぜなら、その差は私たち一部の人物しか知らないからだ」


 ああ、そうか。この世界がゲームによく似ている世界ということを意識できなければ、その差も意識できない。

 でも────


「でも、シギンが万が一、シナリオのことを知っていたら?」


 アリスが疑問を投げかける。


「……仮にシギンがシナリオを知っていた場合でも、問題はない」

「どうしてですか?」

「あいつなら、そうするからだ」


 少しだけ呆れたような懐かしむ表情で口にした。

 私たちは何も言えなかった。


「さて、これからのことだが────」


 学園長が口にした計画は、学園長らしからぬものだった。


 ※


「おい!クローディア様が牢にいないぞ!」

「まさか!ずっとここに居ましたけど、クローディア様は出てきてませんよ!」

「王に報告だ!急げ!」


 ※


「ねえ、今頃アリスが疑われてるよね?」

「んー?そうだねー。まあ、なんとかなるよ。それにしても、学園長も大胆だよね」


 私の心配する声に、のんびりとした声でアリスが答えた。

 学園長の提案した計画は、『ダンジョンの最奥へ向かい、直接シギンを討つ』というものだった。


 なんとも脳筋な計画だ。私でもやらない。

 疑問をぶつけると、「普段の私がやらないことを実行し、シギンの混乱を誘う」という答えになっているかどうか曖昧な返事だった。


「ボスを倒さずに最奥まで行けるのは、楽だけど物足りない」

「物足りないとか言わないの」


 シェルリィの物騒な言葉に答えながら、学園長室へ向かう。

 学園長室から行ける隠し部屋にダンジョンの管理装置がある。

 ゲームでも出てきたが、使用するには学園長の協力が必要だし、強引に使えば学園長にバレる。そういう理由で今まで使えなかった。

 学園長が協力者になってしまえば、使わない理由がない。


「確かここに……あった」


 学園長室に入り、隠し部屋の鍵を開けるためのギミックを見つけた。そこに学園長から預かったブレスレットをかざす。

 地面に魔法陣が展開し、私たちを隠し部屋へ転送した。


「ここがそうなんだ」

「ええ」


 モニターが沢山ある部屋をシェルリィが見渡す。


「アリス、やっぱりここって……」

「……ゲームと一緒だね」


 隠し部屋と呼ばれるこの場所は、平行世界からきた調査団の調査艦だ。



 アリスの言葉に、頷く。

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