11.どうやら、宣戦布告されたようです

「あいつヤバイ」


 シェルリィも危険を察知したようだ。

 刀を構え、視線をそらさない。


「そんなに警戒しないでも大丈夫ですよ?こんな逸材をここで排除はしません」


 シェルリィの殺気をものともせず、こちらに話しかけてきた。

 それほどまでに差があるのだ。


「シギン副隊長、このまま帰っていいかしら?」

「クローディア嬢、それでは僕が姿を現した意味がないことくらいわかるでしょう?」

「あら、でしたら学園長も呼びましょうか?」

「それには及びません。……まだ時間もあるようですし、少し手合わせをお願いします」


 そう言うと、魔法陣が現れその中からナイトシーカーが召喚される。


「シェルリィ!満開まで!」


 その言葉を聞いたシェルリィは微笑みながら、駆ける。


(────一武咲き!弐武咲き!)


 胴に目掛けて、横一線に振り抜く。続けて切り返す。

 あの時とは違いレベルも上がった。それにここには人目がない。ということは────


「遠慮は無しよ!参武咲き!肆武咲き!伍武咲き!」


 突き、上に振り抜く。振り上げた刀の勢いを殺さずに振り下ろす。


 (陸武咲き!漆武咲き!捌武咲き!)


 振り抜いた流れに乗り短刀を逆手で抜き、そのまま首を掻き切る。視界から消えるようにしゃがみ、2刀を鋏のようにし脚を切り裂く。体制が崩れた方から回り込み、背中を突き刺す。


 (玖武咲き!)


 突き刺した二振りの刀を上下に裂く。


「満開!」


 背中を十字に切る。


 シギンは想定より早く倒されたことに興味が湧いたのか、笑みがこぼれている。

 横目でシェルリィに合図し、そのままシギンに向かう。


「「狂い咲き!!」」


 シギンを挟むように両側から、技を叩き込む。


 ────手ごたえがない!?


 シェルリィも不振に思ったのか、後ろに飛びのく。


「いやいや。素晴らしいものを見せてもらいました」


 さっきまで私たちが攻撃していた場所から、シギンの声と拍手の音が響く。


「……いつの間に入れ替わったのかしら」

「いつでしょうね」


 ナイトシーカーを相手にしていても、意識からは外していない。

 今の私では、相手にならないか。


「おや?思ったより早かったですね」


 何のことかと問いただそうとしたところで、魔法陣が現れる。

 現れたのは学園長だった。


「お久しぶりです。カーツェ団長」

「……シギン⁉」

「感動の再会に祝杯を挙げたいところですが、次の準備がありますので退場いたします」

「────待て!他の隊員たちはどこだ!」

「招待状をお送りしますので、楽しみになさっていてください」


 そう言い残すと、陽炎のように消えていった。

 学園長は何かをこらえるように深い溜息をついた。


「クローディア、シェルリィ、こちらに来なさい」


 渋々と学園長の元に向かう。

 足元が光ったと思い目をつぶってしまう。


「何があったか説明しなさい」


 目を開くと学園長室だった。

 少しは労いの言葉があってもいいと思う。


 ※


「説明をと言われても……。急に現れて魔物を召喚されたので対抗したまでです」


「ね~」とシェルリィとそろって返事をする。

 実際、簡潔に説明すればそうなるのだ。

 私たちは何も悪くない。巻き込まれた側。被害者である。

 学園長もそれをわかっているからか、こちらを責めるようなことは言わない。


「これはシギンの宣戦布告と受け取っていいのだろうか」

「そうでしょうね。招待状を送ると言っていましたし」

「……巻き込んでしまってすまない」


 驚いた。

 でも────


「学園長のせいではありません。全てシギン・パースが悪いのです」

「しかし、あいつを諫められるのは私だけだったのだ」

「それでもです」


 学園長は納得しないまま黙ってしまった。


「シギン・パースはまだあなたを。その前提忘れないようにしてください」


「ああ、わかっている」と感情を押し殺した声で頷いた。

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