戦時下の不安定な時代背景の中、倫理的に複雑な夫婦の愛と裏切りを繊細に描く作品です。登場人物の心情が丁寧に掘り下げられており、戦争と個人の感情が絡み合う中で揺れる人間らしさがリアルに伝わります。重くも暖かい視点が印象的。
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もし、どのようなことがあろうとも、夫婦として深く続くことのできる関係があるなら、このようなプロセスを経て成り立つのかもしれない。 他人が口を挟むことではなく、男と女が互いに悟ればそれでいい。 拝読させていただいて、恋路に羨望を抱いてしまうほどの物語でした。 大人の初恋、短絡的な言葉で申し訳ないのですが、私はそう感じています。
戦争という舞台装置をここまで「合理的」に使うというのはひとつ、この物語の突出したる点なのではないかと思います。どう語っても、不倫肯定か戦争肯定になってしまいそうなので拙い言葉で多くは語れませんが……この二人は、一度は道を逸れたのかもしれません、しかし、その過程は、真っ当な夫婦になるための正しい筋道だとしか私には思えなかったのです。私はこれを、純愛小説と呼んで差し支えないと思っています。
様々な事情によって、幾多の愛の架け橋があって。俺の話も聞いてくれ!と思える人は、なんて幸せな人なんでしょう。
まず文体が読みやすくスラスラと入ってきます。それでいて今のラノベとは違ういわゆる純文学の文体です。それからさらに夫婦の女性視点で物事が動くさまをみるのがとても良いです。オチもいままでの文章を踏まえたうえできちんと着地しています。読んで損なしです。