魔法の力がもたらす可能性

「でも、魔法を使える人は多くないから、パーティに誘うには高額な資金が必要でしょう?」


 リリーが眉を顰めながら尋ねる。そうなのだ。魔法使いの母数はそこまで多くなく、さらにほとんどが高い給金のために王城などに仕えるせいで、冒険者ギルドの魔法使いは万年人手不足なのだと、俺たちはギルドで登録するときに受付で聞かされていた。


 そのため、魔法使いとパーティを組むには高い金が必要だという。掲示板にも、魔法使い募集というパーティの広告には、数万ゴルド出すと書いているところまであった。


 リリーの質問にマリオが少し苦笑しながら答える。


「確かに、魔法使いをパーティに加えるには相当な金が必要だ。それに、王城で働くような一流の魔法使いなんて、俺たち冒険者には手が届かない存在さ。でも、そういう一流の連中ばかりじゃないんだ。実力はあっても、自由を求める魔法使いもいる。俺たちが出会った魔法使いも、まさにそんなタイプだった。」


 マリオが懐かしそうに語り出した。


「その魔法使いも最初は王城に仕えていた。でも、堅苦しい決まり事や、上層部の命令に従うばかりの生活に嫌気が差して、冒険者になったんだ。彼は自由を愛する心を持っていて、自分の力を使って好きなように生きたいと言っていた。」


 マークがニコニコと続ける。


「そう、エリオットは俺たちの戦いに助太刀してくれただけでなく、その後も一緒に旅を続けてくれた。彼の魔法は強力で、俺たちのパーティを一気に強化してくれたんだ。それに、彼は金に執着がなくて、俺たちに無理な負担をかけなかった。もちろん、何でもかんでもタダで手に入るわけじゃないけど、彼みたいな魔法使いと出会えるかもしれない。それが、冒険者としての運命の醍醐味だよ。」

「でも、どうやってそんな魔法使いをどうやって…?」


 モモが不安そうに尋ねる。


「それは簡単じゃない。けれど、旅を続けて、いろんな人に出会い、信頼を築いていくうちに、自然と仲間が増えていくものだ。俺たちもエリオットに出会う前は、何度も危険な目に遭ったし、仲間を失うこともあった。でも、諦めずに進んでいれば、必ず道は開ける。」


「それに、最初は金がなくても、少しずつ稼いでいけばいい。今は簡単な依頼でも、経験を積んでいけば、より高額な依頼も受けられるようになる。それに、魔法使いがいなくても、チームワークで乗り越えられる場面も多い。俺たちもそうやって、少しずつ強くなってきたんだ。」


 ジェフが安心させるようにそう続けてくれた。


「冒険は終わりなき旅だが、その道中で何を得るかは自分次第だ。」


 マリオはそう言ってビールをあおった。

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