姫君の好奇心

 遠くに見えていた城は意外に近かったようで、20分ほど馬車に揺られた後、城の中庭らしき場所に引きずり出された俺たちは、その広大な城の威圧感に圧倒されていた。

 石造りの壁、重厚な扉、そして華やかな旗が掲げられた中庭は、まさに中世のファンタジーそのものだ。


 横のリリーが不安に震えているのに気づく。普段の穏やかさを失い、緊張から目を大きく見開いていた。


「リリー、大丈夫だから。俺がなんとかする」


 気休めにしかならないことはわかっていたがそう声をかけると、安堵からかリリーはその長いまつ毛を震わせた。


 その時、城の巨大な扉が重々しく開いた。現れたのは美しいお姫様。金髪のロングヘアは風に揺れ、ドレスには繊細なレースと豪華な刺繍が施されている。

 そのドレスは彼女の砂時計のような体型を際立たせ、特に胸元と腰のラインが美しく引き立てていた。動きは優雅で、まるで舞踏会のダンスのようだ。


「エリス姫!」兵士たちは一斉に頭を下げた。エリス姫と呼ばれた彼女は、俺たちを見つめると驚きと興奮の入り混じった表情を浮かべた。


「わぁ、なんて素敵な衣装なの!」


 姫は興奮した様子で俺たちを見つめる。まるで子供が新しいおもちゃを見つけた時のようだ。


「その奇妙な服装といい、言葉遣いといい、絵本に出てくる異世界からの旅行者みたい」


 エリス姫はさらに興味深そうに俺たちを見つめながら続ける。


「ふふ、本当に異世界からの旅行者みたいね。その衣装と話し方、すごく面白い。あのね、警備隊長が私の大好きな絵本に出てくるような格好の不審者が捕えられたって教えてくれたの。だから走って来たのよ」


 姫の好奇心を感じ取った俺は、何とか助けてもらえないかと希望を抱いた。


「これ、どうにかしてくれるませんか?」


 エリス姫の目がさらに輝き、俺たちの服装と状況に対する興味が増すのを感じる。彼女がこちらに向けた視線はまるで宝物を見つけたかのようで、俺たちの運命が彼女の好奇心次第だと感じた。中庭で立ち尽くし、エリス姫の反応を待つしかなかった。

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