第7話

家の前まで行くと

また同じ人間がいた

「あなたは、彼奴の知合いですか外様の」

私は、相手にそう聞くが、彼女は笑うだけで、それをごまかせたと思ったのであろうか

ただ、すく助のような、不気味な笑みを浮かべる

女は、そこを動こうとせず、まるで、自動人形のようについて来ようとするので

私は、その家の前にある、公園に、彼女を、移動させる

「何の用ですか」

彼女は、またあのファイルを、私の前に出す

「何が聞きたいんですか、そろそろ私も何かを聞きたい頃ですよ」

しかし彼女の中には、対価交換という言葉は無いらしく

私は、一人、相手のことを、無視したような、その質問を、無視しても良かったが

一人、相手の言葉を、答えて、やることにした

「あなたは、あの日、保健室で、何をしていたんですか」

相手の言葉に、首をかしげる

「何をって、何ですか」

「あの保健室で、dnaを、採取できたんですが

あなたは、あの保健室で何をやって居たんですか」

またこれか

意味があるのか

わたしは何もしていない

私は、なにも、聞いていない

わたしは何も知らない

わたしは何も見ていない

私は私はわたしは

私は、これほどまでに、自己中心的か

それとも、それを考えるくらいには、やさしいのであろうか

「保健室で見つかったDNAは、あなたのものではありませんでした

あなたは、あそこで何をしていたんですか」

私は、ぼんやりと考えこむ

「私は、何もしていませんよ

ただ、保健室にいただけです

それよりも、あなたは、どうしてこの事件を追っているんですか

事件で、何か、分かったことはありますか」

彼女は、夕暮れ時の闇を振り払うように、首を振る

しかし、いっしゅんそれはまぎれたような気がしたが

闇が、薄くなることなどなく

質問が濃くなりに連なり

その闇も深くなり始める

街灯も多くないこんな場所で、私は、わざわざ、彼女を駅にまで送らなければいけないのであろうか

「あなたは、あの学校で、好きな人は居ましたか」

小学校の会話だろうか

私は、話を遮る

「もうそろそろ、課題もしなければいけませんし

最後の一つの質問にしますよ」

彼女の顔の表情は、暗さの中でうかがい知ることは難しい

「其れですが、私は、一人いましたよ、保険の階堂先生にね

しかし、私は」

相手が、口を滑り込まされる

こういう時は、相手の答えを、聞いて観察するものではなかろうか

それとも、そう言う作戦なのだろうか

それも私は、許容して、聞いてあげなくてはいけないのか

それがこの世の中に、必要とも思えないが、わたしに意味を見出すのであろうか

「コンドームからは、あなた以外の精液が、発見された

それがこの事件に深く関わり合いがあるのかどうか、調べるだけ調べなければいけないほどに

この事件は、人が大きく被害者が多すぎた

つまりは、この箱の中、そして、その外のことが、徹底的に、調べ上げられたが

しかし、その結果が、言い訳の落としどころだった

そのせいで、その会社は、何人もリストラしなければならないほどの打撃を、受けたが

それが、この事件にかかわりがあるのかもわかりません

しかし、あなたは、恋を、保険の先生にした

しかし、あなたの言動は、彼女には、恋はあったが

その肉体にまでは、興味がなかった

もしくは、しなかった

そうですね」

私は答える理由を考えた

黙秘したところで、何か私に不利になることがあるとは思えない

せいぜい、彼女からの嫌がらせを、もしかすると、大学の集団でおこなわれる可能性だが

彼女がどういう人物か分からないが

それでも、私は、そんな事は、どうでもよかった

少なくとも、こんな馬鹿な事をするくらいに

それは、正義心か

それとも、あいゆえに

成績、好奇心、実験

分からない

習ったことを、実験したいのか、其れの複合的理由かそれは私には、分かりかねる

しかし、彼女は言った、これは、最後でいいかと言った時に

じゃあ、答えてやろう

どうでも良い答えだ

私には何の意味もない

そして、真実だ

「僕は、話を聞いただけだ

一つも、手を取ったことはない

ただ、彼女のそばにいた、それだけですよ

彼女には、他に、付き合っていた人が居たそうですが」

女は聞く

「それは、本当に、恋人と言う関係だったんですか

あなたは、これを、不倫と言いましたが

本当ですか

あなたは、話を、聞いていただけなのではないですか」

私は、ぼんやりと彼女を見る

「僕がいつ、不倫という単語を、出したんですか」

闇の中、彼女の表情は見えない

しかし、口が開く

暗い口の中

その中から

その頭から

その感情から

そこから、何が出てくるのだろうか

それは





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