第4話

「それで、一体、何があったと言うのでしょうか」

私は、何度も聞かれたが、そこに存在するものが、全く理解できなかった

「死」

そんなものは、転がって居る

自分だってすぐ死ぬかもしれない

だからこそ、今更、それに感傷的になることはできない

皆が皆、そこまで、まっすぐではない

もう、それぞれが、歪み始めていた

だからこそ、誰かを守る必要はもうない

なぜなら、もはや、そこには何もないのだから

だからこそ、血の海を、見た所で

何の感情もない

ただ、死んだ

それが、早いか遅いかの違いでしかない

ただ、それでも、残念ではある

何が残念か理由は、全くはないが

「君は、つらいんだね、満足に、幸せを感じる事が出来ないくらいに」

横の刑事と名乗った女の人が

灰色のスーツを着込んで、近くにいた

「いえ、何が聞きたいんですか

残念ながら、私は、良くは、分かりません」

彼女は言う

「分からない、それを決めるのは、私達だから

それで、あなたは、良く保健室に行っていたけど

でも、成績が悪いわけでも、授業を、さぼるわけでもない

ただ、早朝の時間・・・貧血か何かで、朝が弱いの」

この人に、決められることではない

私の決める事だ

そう言いたいが、そう言いたいのであれば、そう言わせておいた方が良いのではないだろうか

「ええ、どうも、夜型のせいか、朝は、そうですね、すいみんはだいじですが、どうも、幾らねても」

彼女は、こちらを見ながら

「そうかもね」

と、そう言った

いったからと言って、それが信用したとは思えなかった

「あなた、あの保健室で何をやって居たの」

またこちらに質問をする

何を疑っているのか、彼女とのことか

しかし、べつに、何かをやったわけではない

「ゴミ箱に、コンドームが、あったんだけど、あなたのかしら」

彼女は、言葉をとぎらす

しかし、その目の疑いは、嘘だ

私は、何もやって居ない

やっていても、それは・・・

「あなたは、何も知らないのね」

私は、何を知って居ないのであろうか

「何を知らないのでしょうか」

残念ながら

彼女は、言葉をつづけることで否定する

「それを決めるのは、私達で、あなたじゃないわ

それで、あの日、何か、変わったことは」

私は、そんな事は、知らない

私はただ、あの場所にいただけである


暗い道を、一人歩いて行く

周りの人間は、それぞれが、行く先を決めていたが

自分一人だけが、あてもなく、前を歩いて行く

行く場所は決まって居る

しかし、それに理由がない

理由がなければ生きる価値はないと言うのだろうか

揺らぐ視界の中

何とか、家に着くと

横から声がした

「へえ、戸崎君の家、ここなんだ」

確か、一年年上の先輩であった


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