奇色いワンピース

興信所所長との電話

　もしもし。ミカさんですか。ええ、棚主です。おかげさまで未だ健在です。

　涅槃未知果、というか、中山勉ですか。彼の住んでた家が取り壊されることになりましたんで、ご報告しとこうと思いましてね。

　どんな手を使ったって、企業秘密ですよ。ま、一市民としていろんな苦情を入れたってとこですか。

　とにかく判事が生きてる間にぶっ潰しておかないと、まずいでしょ。アザバラノスクナがいない間に巣を更地にするんですよ。

　酷い人って、あんたに言われたくないですよ。調べましたよ、あんたの前科。そりゃ、8年喰らいますわ。鬼畜の所業ですわ。

　ええ、そうそう、中山勉の家からはやっぱりアザバラノスクナ考に類する文献が出てきました。こいつを処分しちまえば脅威が一つ消滅します。

　ただ、かなり貴重な資料で、ちょっと未成年のガキが手に入れられる代物じゃないですね。

　はい。ですからね。中山勉に文献を与えた人間がいるはずなんですよ。

　さあ、そこまでは。不幸な人間を利用するやつはどこにでもいますから。しかし、なにせ30年前です。暗躍したやつもいい年のはずですから、その内天寿を全うするんじゃないですか。

　とにかくもう、これ以上背景は探れません。やるだけやった感じですね。

　ネットにばら撒かれた有害な情報はもう回収不能ですし、涅槃未知果の同人誌も同じです。本人が亡くなったのでどうしようもありません。なるようにしかならんです。

　中山美歩は冤罪刑事に、アザバラノスクナは判事に憑いてますが、どちらのターゲットもその内亡くなるでしょう。

　その後、二人の黄色いワンピースが何をするかは、分かりません。どちらも駆逐することが不可能な存在のようなので、根本的な解決法は無いです。

　中山勉の言った通り、忘れるのが一番かもしれませんね。

　いえいえ、礼には及びません。お代はたっぷり頂いたんで。小杉さんも少しはこれで報われるでしょう。

　はい、はい、それじゃまた何かありましたら。ごきげんよう。