あした、いいこと、うまれるかも

冬野 向日葵

「え!? なにこの会話」「おもしろいしいいんじゃね?」

「あのさ、『あいうえお作文』ってあるじゃん」

「いいよね、あれ」

「うーん、僕はあまり好きじゃないんだけどなぁ」

「えぇー、楽しいじゃん!?」

「おもしろいのにねぇー」


「かなり言葉遊びも種類があるからね。面白いのなんて他にもたくさんあるよ」

「きりきりと怒らないでよ」

「くるしいわよ、怒ってばっかりいたら」

「けしからん。結局しりとりが最高なんだよ」

「こどもなんだから……」


「さすがにひろしも成長しようよ」

「しゃべんな。人の言葉に口をはさまないでくれ」

「すみませんでした……」

「せかい平和は謝罪と感謝から生まれるんだね」

「そういえばさ、なんかさっきから変じゃない?」


「たしかに」

「ちでも出た? 大丈夫?」

「つまんないぞ、そういう冗談」

「ていうかどういうことなの?」

「とりあえず私には訳が分からないんだけど。いったい何が変なの?」


「なぁ、さっきから会話してるだろ?」

「にこにこ笑っちゃってさ、早く言いなさいよ」

「ぬいぐるみ……ほら、言いたくもないのに」

「ねぇ、一体どういうこと!?」

「のんちゃん、落ち着いて聞いてね」


「はい、落ち着いた」

「ひろし、説明してあげて」

「ふつうに考えてみてさ、この会話文の空行の位置、おかしくないかな?」

「へ? てっきりそういうものなのかと」

「ほら、そういうところ! もっと周囲に気をかけてよ!」


「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。次のセリフの初めの文字は『み』になってしまうんだよ」

「みず飲みたいわね。喉乾いちゃった」

「むいしきのうちに『あいうえお作文』になっちゃってる!」

「めあたらしいタイプの超常現象ね」

「もう! 怖いこと言わないでよぉ……」


「やっぱりさぁ、コレ何の仕業なんだろうね」

「ゆりちゃんならわかるんじゃない? 霊感あるし」

「よせ。僕は見当がついている」


「らしんばんの示すほうに答えはある!」

「りかい不能……」

「るーるなんだから仕方がないでしょ」

「れっつごー!」

「ろくさいの子供じゃないんだから……」


「わたしです……ごめんなさい」

「をもしろかったし、まだ続けてもいいよ!」

「んー、今日は疲れたからまた今度ね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あした、いいこと、うまれるかも 冬野 向日葵 @himawari-nozomi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画