第31話 敵襲
轟音と衝撃で訳もわからないまま吹き飛ばされたボクは全身に負った傷の痛みで気絶しそうになりながらも間一髪のところで意識を保っていた。
そんなボクの頭の中で声がする。
『俺に代われ。今すぐ攻撃してきた奴らに俺を狙ったことを後悔させてやる』
……ダメだ。
『ダメ?なんでだ?やられたらやり返すべきだ』
それじゃあ、相手の目的がわからない……。
『ふーん、なるほどな。ならとりあえず回復だけはしとけ。
「『
頭の中の声に従い、そう唱えるとボクの身体中の傷は全て消え去さり
傷が癒えて頭が冴えたことにより周りの状況がようやく把握できた。
「何だこれは……」
元々、廃墟だらけの街がさらに酷い有様になっている……。無差別攻撃ってレベルの話じゃない。完全に破壊行為だ。
「ベルさん!!グレッグ!!」仲間たちの名前を叫ぶも返事がないし姿も見えない……。
幸い敵の姿も見えないがどうやって攻撃してきたのか、どちらから攻撃してきたのかも想定できない。
次の攻撃に備えた方がいいのか生存者の捜索を優先するべきかボクは悩む。
これだけの広範囲攻撃を連発できる訳ない。と都合よく考えたボクは仲間たちの捜索を優先しようとするが手段が思いつかない。
風魔法……はないな。土魔法で動かす?いや、逆に被害が拡大するかも。
水魔法も今、使ったところで状況が好転するとは思えない……。
「あと……ボクが使える魔法は………………」
こんな事なら昔、地元ロックデールで起きた事故を救ってくれたエルフがいた話をグレッグたちに伝えて、その時使われた魔法について教えてもらっておくべきだった……。
後悔はいつだって間に合わない。
「……くそっ!ボクは無力だ……」
絶望感から地面に膝をつき地面を殴る。
ボクは目頭が熱くなるのを感じる。
泣いたって何も変わらないのに。
「……崩……剣………」
背後から弱々しく小さな声が聞こえた気がする。
声の方へ振り返ると崩壊した建物の破片の下に埋もれるロイ少年がコチラへ助けを求めるように手を伸ばして倒れていた。
「ロイくん!!」
ボクが大急ぎで駆け寄り血だらけの彼に回復魔法をかけるとたちまち回復し「ボクはいい!ピジョンたちがボクを守って埋もれている!」とロイ少年は言った。ボクはこの状態で他人の身を案じれる、自分とたいして歳の変わらないであろう、この少年の器に驚いた。
「でも、この状況じゃ探そうにも手がないよ。今のボクに使える魔法は限られているし……」
ボクはロイ少年を瓦礫の下から救い出し状況伝えると彼は何を言っているんだというよな呆れた表情をし「回復魔法があるだろう」と言ってボクの肩を叩いた。
ボクはそう言われたところでピンと来ておらず首を傾げてしまう。
「広範囲に回復魔法をかけるんだ。普通の人なら不可能だが崩剣なら可能だろう?雑な力技だが今は出来ることをやるしかあるまい」
ボクは自らが自認する年齢より下の少年が力強く提案してくれた作戦に頷き魔法を唱える。
広範囲に広がるイメージで深く強く集中していく。
「『
光の輪がボクを中心に大きく波及していく感覚が集中するために目を瞑っていてもわかる。
「さすが崩剣だな。本当にできるとは思ってなかったぞ」ロイ少年はなんとも無責任なことおっしゃる。
魔法に詳しいのかと思ったがそんなことはなかったらしい。
「……おーい」どこからか、か細い声が聞こえてくる。
「見つけたぞ!あそこだ!」
ロイ少年が一目散に駆け寄って瓦礫に手をかけようとするのをボクは崩れると危険なので静止する。
「じゃあどうするんだ!早くしないといくら何でも辛いぞ!」
「場所がピンポイントでわかったので使える魔法があります。下がってください」
焦るロイ少年を退かしてボクは声のする場所に被さった瓦礫に手をつけ土魔法でソレらを側方へ移動させるとグレッグとベルさんが見つかった。
「ピジョンは?!」
助かったのが二人だけと気がついたらロイ少年はそう叫ぶ。
「……わかりません」ベルさんは申し訳なさそうにそう答えるしかなかったようだ。
「……とにかく二人が無事だったことを喜ぼう」
涙を堪えるように震えた声でそう呟く姿は悲壮感に溢れていた。
「……ハート助かったよ、ありがとう」
グレッグがボクのところへ寄ってきてロイ少年へは配慮して小声で礼を述べできたので頷くだけで返事をした。
「探知魔法は使ってみたか?」
「え?……え?なんて?」ボクはグレッグの口から出た単語が咄嗟に理解できず聞き直す。
「
「わかった。けど、どんなイメージの魔法何だろう?完成系というかカタチが想像つかないと……」
探知魔法というのはボクの今まで使ってきたどの魔法とも違う種類な気がする。
「とりあえずやってみないと。まずはピジョンを探すよりも他の誰か巻き込まれた人がいないかとか全体的に探すイメージでやってみようぜ」
「なるほど、それで誰も見つからなかったらピジョン個人を探す感じでやってみるってことか」
グレッグは頷き肯定する。
「じゃあやってみる。『
目を閉じて集中すると、耳と肌感覚が鋭敏化したような感覚に陥る。
肌に触れる服の繊維や耳の中へと入ってくる風の音が大きく感じるがこれじゃダメだ。必要なのは探知範囲であって精度や詳細は雑でいい。
一瞬目を開けて集中を途切れさせると「見つけた」と無意識にボクは呟く。
「本当か?!」グレッグは思わず叫び、消沈していたベルさんとロイ少年がコチラへ気がつく。
「あっちの方だ。深い場所に埋もれているけどまだ息はある。地面越しだと回復魔法は届かないのか」ボクの指差した方向へロイ少年は有無を言わさず走って行った。
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