第13話
あれから、あの人から音沙汰はない。
私からも、しなかった。出来なかった。
年が明けバイトも辞め、引越しの準備、実家の片付け。時給の良い単発のバイトをこなす。
最初は連絡が来るのが怖かった。次第に「来ないのでは」と思う度に肺が痛んだ。そして沈丁花の香りと共に、慣れて行った。
少し空が明るくなってきた頃、外に出ると空気に花粉を感じた。あれから避けていた川沿いの道。最後に歩いてみよう。マスクをかけると、自分が何か大きな建物の窓から覗いている気分になる。ロボットの足が付いていて操縦できるのだ。
ガシャン、ガシャンと歩いていく。
川にはいつものカルガモや渡り鳥達がぷかぷかと浮かび、呑気なようで私を用心深く見ている。
冬枯れの中に、もう沢山の植物がそれぞれの種らしさを伸ばしている。
オオイヌノフグリに青い花、赤いてんとう虫。
人の踏み跡の両側に低くへばりついた、たんぽぽ。西洋か日本かわからないけれど、見慣れた黄色い花を咲かせている。
緑の中に黄色い点々。ずっと続いていく。細い道の両側に。
これは、滑走路だ。
私は飛び立つ。
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