第3話
蝉の鳴き声も静かになり、真夏に枯れていた草が復活してきている。近くで土鳩がボーボーと鳴いていた。今日は店舗周りの草むしりだ。虫が出ると嫌がる人もいるが、私は好きだ。一人、最後の片付けをまかされたので、ゆっくり草やゴミを集めていく。
ふと店内を見ると、常連さんが入り出している。みんな元気だな。隅の席に自称小説家も居る。自称している訳ではないから、「小説家かもしれない噂のある人」か。もう一月たったんだな。
ちょうど窓際で、こちらに背を向けている。本当に小説家なのか何を書いているのか好奇心がわき、徐々に近くへ進んでいく。不自然にならないくらいに見てみたが、ノートにはグルグルと判読できない鉛筆の線があるだけだ。やっぱり暇つぶしの変な人か。
と思った瞬間その人はこちらを向いていた。
合った目は「失礼だぞ」と言っていた。
あぁ、しまった。私は慌てて頭を下げるとゴミ袋を抱えて立ち去った。
すぐに店内に戻るが、その人はもういなかった。
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