第14話 異世界の養護教諭さん

「育成ギルド……ってなんですか?」


「簡単に言えば少年のような戦闘に不慣れな者が最初に通うべきところだ。まぁ細かいことはいいからとっとと手続きを済ませてしまえ」


 オルンさんと、そして受付の女性に背中を押されるがまま育成ギルドに加入することになった。


 戦いにおける全ての中で超入門がこの育成ギルドだということで、加入するメンバーの平均年齢はかなり若く、最年少は6歳で加入した人がいるらしい。


 ルージュリア王立学院へ入学するためにここで学び力をつけて入学試験に挑む、というのが多いらしいが、その学院はおそらくアリシアが当主から入学を提案されていた所だろう。


「……オルンさん、学院に入学できるのは何歳なんですか」


「16歳だ。ついでにキミが知りたい情報を言うならば、入学試験は今からちょうど半年後だ」


 あれぇ……思っていたよりずっと間近だった。


「ルージュリア王立学院に入学する気なのか少年?はっきり言うが、安直な考えで入学するようなところではないぞ」


「それはそうなんですけど……、俺はアリシアと一緒に学院に通ってみたいんです。アリシアを説得して、当然俺は受かるように死ぬ気で頑張って、もちろんオルンさんも一緒に三人で入学できたら、それって絶対楽しいと思わないですか」


 アリシアもオルンさんも、入学に必要な条件は満遍なく満たしているに違いない。


 ただ俺だけが一ミリも条件を満たせていない。


 だからこれから半年間はこの身を削ってでも必死にトレーニングをしなければいけないことも分かっている。


「私は至って現実的な話をしているんだ少年。キミがどれだけその身を鍛えたからといって入学に足るとは限らない。この世界は努力家にそれほど甘くはないのだよ。だから入学するというのは諦め───…」


「──それなら入学に足るまで努力をするだけです。絶対に諦めませんよ、オルンさん」


 真剣な表情でいる彼女に対して、俺は微笑むように宣言してみせた。


「………本気なのか」


「本気です。大真面目ですよ俺は」


 根拠など何一つないし成し遂げられる可能性だって限りなくゼロに近いのかもしれない。


 だが達成できる可能性がないわけではない。


 彼女の言う通り、極めて安直な考えだということは分かっている。


「ははっ……随分と豪語を口にしたな少年。武器を持ったことも魔法を使ったこともないくせに口だけは一丁前だ」


「アリシアとオルンさん、二人と一緒に入学したいですからね」


「それは参ったな………あのような場は私は苦手なのだよ」


「だから三人で入って、仲良し三人組で一緒にいれば一番楽しいじゃないですか」


 アリシアを説得する必要があるが、それよりもまずは俺が力をつけることが最重要事項だ。


 正直なところ、自分が魔法を使う姿なんてまるで想像できないわけだが、不安と恐怖心がある一方で好奇心もある。


「俺、頑張りますよオルンさんっ!だから、絶対に───」


「アキト様、お待たせしましたー。これからの説明をさせていただくのでこちらへどうぞー」


「……あっ、はい」


 受付嬢に連れられて奥へ移動することになり、ここでオルンさんとは別れることになった。


「アキト様は魔法を学びたいということでよろしいですね」


「はい、それでお願いします」


 剣術はオルンさんから直々に教えてもらえることになったから、ここでは魔法を学ぶことにした。


「分かりました。それでは今から魔法に対する適性検査その他魔力測定などを行なっていきます」


 開けた場所へとやってきた。


 最初に目が止まったのは、巨大な石──それもまるでダイヤモンドのように透明感があり、とても綺麗だ。


 なんだか、ここに来て一気に異世界ファンタジーの始まりの予感を感じさせてきている。


「あなたが新しく加入してきたっていう新人なのかしら?」


 白衣姿の女性がこちらへ歩いてきているのに気がついた。


 というか、白衣にメガネ……と、その、最高なボディがまさに保健室の先生だ。


「あっ、アキトです!」


「………なぁにぃ〜?そんなに私の身体をジロジロ見られたら照れちゃうじゃない」


「ご、ごめんなさい!ついっ……!」


 胸から露出している生脚まで、露骨に視線を向けてしまった。


 というかコレはどうしたって見てしまうくらいにエ◯い。


 もう言ってしまうが、この人は半端じゃなくエ◯い。


「すみませんっ!エ◯すぎてガン見してしまいました!!」


「わおっ!突然そんな大きな声を出されたら驚いちゃうじゃない。てか、そんなこと知ってるわよ。バカなこと言ってないでとっとと済ませちゃうわよ。ほら、そこにある水晶と大きな魔法石に触れなさい」


 勇気を振り絞って言い放った俺の宣言は、本人にとって既知の事実ということで呆気なく掻き消された。


 言われた通りに手をかざして、測定はすんなり終わった。


 これで俺も異世界転移されて初めに行うであろう恒例行事を済ませ、この世界での自らの力を知るという初めの一歩を進んだ。


 最初の小さい水晶はやたら派手に光っていたが、次に手をかざした巨大な魔法石というものはほんの僅かしか光らなかった。


「…………あなた、いったいどうしたらこんな意味の分からない偏り方をするわけ?」


 エ◯い保健室の先生──もとい測定係のお姉さんにこれほどまでにない怪訝な表情をされた。






───

※「ゲームの世界」設定を無くします。ピコンッという音ともにパネルが出現することはもうありません。ここは異世界です

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