第10話

おかしいなと思ったのは、翌日の朝。


 凪さんから返信が来てなくて、僕のメッセージは既読になってない。


 いつも、一時間以内には返信きてるんだけどな……


 僕は首を傾げながらも止まっている歌詞作りに取り掛かった。


 けれど、それから三日経っても連絡は来なかった。小説の更新も止まってるし。流石に変だと思って何度か連絡を入れたけど、既読はつかなかった。


 突然連絡が来たのは、音信不通になって四日目。今日はカフェで待ち合わせの日だったから、一応用意をしていた。


 通知が鳴って、僕はハッとしてDMの画面を開いた。


『助けて』


 その一言だけが送られていた。


「……!」


 部屋で執筆をしていた僕は、そのメッセージを見て一瞬、思考が停止した。だって、こんなこと今まで無かったから。


『どういうこと?』


 止まった頭を無理やり動かして、キーボードを叩く。けれど、それには既読がつかない。


「っ!」


 僕はリュックを持って部屋を飛び出した。階段を駆け下りて、靴に足を突っ込む。


「奏太? どうしたの?」


 母さんが驚いたように僕を見ているけど、僕はそれに構わずにドアを開けた。


 凪さんが、今どこにいるのかは分からない。片っ端から探していくしかない。けど、僕が今思いつく凪さんの居場所は、あのカフェしかない。


 強い太陽が照りつけてきて、顔から汗が吹き出すけど、そんなのに構っていられない。こんなに全力で走ったの、いつぶりだろう。


「マスター!」


 カフェの扉を勢いよく押し開けると、上のほうに付いている鈴が大きな音で鳴った。


「おお、どうした?」


 コーヒーを入れていたらしいマスターが、驚いて僕を見る。


「凪さん知らない?」


「凪? ……ああ、いつもお前さんといる嬢ちゃんか。今日は見てないぞ」


「じゃあ、どこに……」


 カフェにいないとしたら、一体どこで何を――


「いや、そういえば」


 マスターが何かを思い出したように顔を上げる。


「朝ゴミ出しに行った時、嬢ちゃんらしき子は見たな。制服着て、何人かの女の子と一緒にいたよ」


 制服……そっか、今日平日か。……って!


「その女の子たちって、三人でしたか?」


「ああ……三人だったな」


 間違いない。凪さんは、なにかの理由であの人たちに学校に行かされているんだ!


「ありがとうマスター!」


 僕はカフェを飛び出した。

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