第十話: 王都での邂逅

悠斗たちは、古代王国の滅亡と「インフィニティグロース」のスキルにまつわる話を聞き、ますますこの世界の謎に引き込まれていった。初老の学者から得た情報は、彼らにとって大きな手がかりだったが、それでもまだ多くのことが未解明のままだ。


「災厄…それが、この世界に再び現れるとしたら…」


悠斗は学者の言葉を反芻しながら、王都の通りを歩いていた。エリスとリュウもそれぞれ考え込んでいる様子だった。悠斗はふと足を止め、仲間たちに声をかけた。


「もう少し、この王都で情報を集めてみよう。何か重要な手がかりがまだあるかもしれない」


「そうね。災厄の正体や、インフィニティグロースのスキルがなぜ存在するのかを知るためには、もっと調べる必要がありそうだわ」


エリスもその提案に賛成し、リュウも黙って頷いた。3人は再び学者たちが集まる地区に戻り、さらに詳しい情報を得るために動き出した。


その日の午後、悠斗たちは学者たちが集まる図書館で古い書物を調べていた。そこには、古代王国や災厄に関する記述がいくつか見つかり、その中でも特に目を引いたのは、「異界の門」に関する一節だった。


「異界の門…?これが災厄の元凶なのか?」


悠斗はエリスとリュウにそのページを見せた。書物には、かつて異界とこの世界をつなぐ門が存在し、その門が開かれたことで災厄が解き放たれたと記されていた。


「異界…別の世界とつながっていたということかしら」


エリスは眉をひそめながらその記述を読み進めた。異界の存在が災厄を招いたとすれば、その門が再び開かれる可能性もある。そして、その災厄が再びこの世界を脅かすことになるかもしれない。


「俺が異世界から来たことと関係があるのかもしれないな…」


悠斗は心の中で考えた。自分がこの世界に転生した理由が、ただの偶然ではなく、何か大きな運命に結びついているのかもしれないという思いが強まっていった。


「異界の門が開かれる場所や方法についての情報は、まだ見つかっていないけど…でも、これが手がかりになるかもしれないわ」


エリスが静かに言った。悠斗も彼女の意見に同意し、異界の門に関する調査を続けることにした。


その夜、王都の宿に戻った悠斗たちは、異界の門に関する情報を整理し、明日からの行動を考えていた。しかし、悠斗が窓の外を眺めていると、不意に遠くから叫び声が聞こえてきた。


「何だ…?」


悠斗は耳を澄まし、エリスとリュウにもその声を伝えた。彼らはすぐに宿を飛び出し、声が聞こえた方向に向かって走り出した。


王都の一角、夜の闇に包まれた路地裏で、数名の男たちが何かを取り囲んでいた。悠斗たちが駆けつけたとき、男たちは驚いた様子で振り返り、刃物を構えた。


「こいつら…!」


悠斗はすぐに状況を理解し、エリスとリュウに後退するように指示した。囲まれていたのは若い女性で、男たちに襲われそうになっていた。


「おい、やめろ!」


悠斗が叫ぶと、男たちは嘲笑しながら振り返った。


「邪魔をするな、ガキども!」


男たちは悠斗たちに向かって刃物を振りかざし、襲いかかってきた。悠斗はその攻撃をかわしながら、木の枝を構えた。


「エリス、リュウ、後ろに下がってろ!」


悠斗は素早く反撃し、男たちを一人ずつ倒していった。エリスとリュウも、それぞれできる限りのサポートをし、彼らの攻撃を防いでいた。やがて、男たちは悠斗の力に圧倒され、次々に倒れていった。


「やるじゃねぇか…だが、これで終わりだ!」


最後に残ったリーダー格の男が、隠し持っていた短剣を振りかざして女性に襲いかかろうとしたその瞬間、悠斗は全力で彼に飛びかかり、その攻撃を防いだ。


「こいつは…渡さない!」


悠斗は力を込めてリーダーを地面に押さえつけ、そのまま動きを封じた。男は諦めたように短剣を手放し、やがて気を失った。


「ふう…何とか終わったか」


悠斗は立ち上がり、エリスとリュウが無事なことを確認した後、襲われていた女性に手を差し伸べた。


「大丈夫ですか?」


女性は恐る恐る顔を上げ、悠斗の手を握り返した。彼女は美しい黒髪を持つ若い女性で、その瞳には感謝の気持ちが込められていた。


「ありがとうございます…助かりました」


女性は深く礼を言い、その場に座り込んだ。エリスが彼女の隣に寄り添い、安心させるように声をかけた。


「もう大丈夫よ。私たちが一緒にいるから、心配しないで」


「でも…私はこの街では厄介者扱いされていて…」


女性は辛そうに言った。どうやら、彼女には何か事情があるようだった。


「君の名前は?」


悠斗が優しく尋ねると、女性は少し躊躇しながらも答えた。


「私の名前はリーナ…私はこの王都で、魔法使いの見習いをしている者です」


「魔法使い…?」


悠斗たちは驚いた。リーナが言うには、彼女はこの王都で魔法の力を学んでいるが、その力が原因で他の人々から疎まれているのだという。


「私が魔法の力を使うと、周りの人々が恐れるんです。だから、こうして街で襲われることもあって…」


リーナの言葉に、悠斗は彼女がどれだけ孤独だったかを感じ取った。


「でも、君の力が役立つ時がきっと来るよ。俺たちも、異世界から来て色々な試練を乗り越えているけど、君が仲間になってくれたら心強い」


「本当ですか…?」


リーナは信じられないという顔で悠斗を見つめた。エリスも微笑みながら彼女に手を差し出した。


「もちろんよ。私たちと一緒に旅をしない?きっと君の力が必要になる時が来るわ」


リーナはしばらく考えた後、ゆっくりと頷いた。


「ありがとうございます…私で良ければ、皆さんと一緒に行かせてください」


こうして、悠斗たちは新たな仲間を得た。リーナの加入は、彼らの旅に新たな展開をもたらすことになるだろう。異界の門や災厄の謎に迫る彼らの冒険は、さらに深まっていくことになる。


この王都での出会いが、彼らにどんな試練をもたらすのか。そして、リーナの持つ魔法の力がどのように活かされていくのか。それはまだ誰にもわからない。

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