第九話: 王都への道

悠斗、エリス、リュウの3人は、古代遺跡で得た情報を元に、次なる目的地である王都を目指していた。遺跡で明らかになった「インフィニティグロース」のスキルの起源と、古代文明の災厄に関する予言は、彼らにとって大きな衝撃だった。悠斗は、そのスキルをこの世界を守るためにどう活かすべきかを考えながら歩いていた。


「王都には、この世界の歴史や魔法についてもっと詳しく知っている人たちがいるはずだ」


エリスは前を歩きながら、期待に胸を膨らませていた。彼女は学問に対する興味が強く、特に古代文明や魔法に関する知識を深めることに情熱を抱いていた。


「そうだな。俺たちが知りたいことが、王都にあるかもしれない」


悠斗もその意見に同意し、リュウも小さく頷いた。


「王都ってどんなところなんだろう?すごく大きくて、いろんな人がいるのかな…」


リュウはまだ幼い好奇心を隠せない様子で、少し不安そうでもあった。しかし、彼は悠斗たちと一緒にいることで安心感を得ており、旅を続ける勇気を持ち続けていた。


「きっと驚くような場所だろうな。でも、油断は禁物だ。大きな都市には、それだけ多くの危険も潜んでいるかもしれない」


悠斗は警戒を怠らないよう、仲間たちに注意を促した。


数日間の道のりを経て、ついに彼らは王都の外れにたどり着いた。高い城壁に囲まれた巨大な都市が目の前に広がり、その壮大な光景に3人はしばし言葉を失った。


「これが…王都か」


悠斗はその威圧感に圧倒されつつも、冒険心を刺激されていた。王都の入口には、厳重な警備が敷かれており、数名の衛兵が通行人をチェックしていた。


「入るためには、何か身分証明が必要みたいね」


エリスが衛兵たちの様子を見ながら言った。王都に入るためには、身元を確認されるのは当然のことだった。


「何か問題があったらどうしよう…」


リュウは不安そうにしていたが、悠斗は彼の肩に手を置き、安心させるように微笑んだ。


「大丈夫さ。何かあっても、俺たちは一緒だ。それに、正直に話せばきっと問題ないだろう」


悠斗たちは衛兵の前に進み出て、順番を待った。彼らの前に並んでいた商人たちが身分証を見せ、荷物の検査を受けているのを見ながら、悠斗はどう切り抜けるかを考えていた。


「次の方!」


衛兵の声に呼ばれ、悠斗たちは前に進んだ。衛兵は彼らを見て、冷静な声で問いかけた。


「目的は?」


「ええと…私たちは旅の途中で、王都で学びたいことがあって来ました」


エリスがしっかりとした声で答えた。衛兵は彼女の言葉を聞いて少し考えた後、うなずいた。


「学びたいこと、か。それなら、学者の街道に行くといい。身元を確認させてもらうが、何か証明できるものは持っているか?」


「はい、これを」


エリスはポーチから身分証明書を取り出して差し出した。彼女は旅商人の娘であり、父親から渡された証明書があった。衛兵はそれを確認し、頷いた。


「問題ない。だが、あとの二人はどうだ?」


衛兵は悠斗とリュウに視線を移した。悠斗はポーチを探るふりをしながら、エリスが身分証を持っていたことに感謝していた。


「私は…商人の見習いで、彼女と一緒に旅をしています。身分証はエリスと同じ商人の許可証があるはずです」


悠斗はエリスの証明書に少し頼りつつも、しっかりと答えた。リュウは言葉に詰まりかけたが、悠斗が彼の肩を支えるようにして衛兵に説明を続けた。


「リュウは孤児ですが、私たちが一緒に面倒を見ています。この旅を通じて、彼に知識と技術を教えたいと思っています」


衛兵はしばらく考えた後、深く息をついて彼らに告げた。


「そうか…なら、特例として認めよう。だが、王都では規律を守るように。それを破れば、たちまち問題を抱えることになるぞ」


「ありがとうございます。気をつけます」


悠斗は礼を言い、リュウと共に衛兵を通り過ぎた。こうして彼らは無事に王都へと足を踏み入れることができた。


王都の内部は、外から見る以上に活気に満ちていた。広い通りには露店が並び、商人たちが熱心に商品を売り込んでいる。悠斗たちはその喧騒の中を進みながら、学者たちが集まる街道へと向かった。


「ここが…学者たちの集まる場所か」


エリスが目を輝かせながら、周囲を見回した。通りには古びた書物を抱えた学者や、錬金術師らしき人々が忙しそうに歩いている。


「まずは、誰かに話を聞いてみよう」


悠斗は通りの端にある大きな建物を指差し、3人でその中に入ることにした。建物の中は図書館のような造りになっており、壁には大量の書物が並んでいた。中央には大きなテーブルがあり、学者たちが集まって議論を交わしている。


「ここなら、色々な情報が得られそうね」


エリスが嬉しそうに本棚を見つめていると、一人の初老の男性が近づいてきた。彼は落ち着いた声で話しかけてきた。


「君たちは、何かを探しているのかね?」


悠斗はその男性に向き直り、礼儀正しく頭を下げた。


「はい。私たちはこの世界の歴史や、特に古代文明について学びたいと思ってここに来ました」


「古代文明か…それは興味深いテーマだ。君たちが求めている情報がここにあるかもしれないが、まずは私に話してみなさい」


悠斗は遺跡で見た映像や、「インフィニティグロース」のスキルに関することを簡潔に話した。男性は興味深そうに耳を傾け、やがて深くうなずいた。


「なるほど…君たちが話しているのは、かつてこの地を支配した古代王国のことだろう。この王国は強力な魔法と技術を持っていたが、ある日突然滅亡したと言われている」


「その滅亡の原因は何だったのでしょうか?」


エリスが問いかけると、男性は思案顔で答えた。


「災厄だ…伝説によれば、王国を滅ぼしたのは恐ろしい災厄だった。だが、その災厄が何であったのか、そしてそれが今も脅威となるかどうかは不明だ。ただし、君たちが言っていた『インフィニティグロース』というスキル…それが予言に関連している可能性がある」


悠斗はその言葉に胸が高鳴るのを感じた。古代王国と自分のスキルがつながっているという確信が強まっていった。

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