第十一話: 魔法使いリーナの過去と試練
新たに仲間となったリーナと共に、悠斗たちは王都での滞在を続けていた。異界の門や災厄に関する情報を集める一方で、彼らはリーナが抱える問題にも向き合うことになった。
リーナが魔法使いとしての力を持っていることは、悠斗たちにとって大きな力となる可能性があった。しかし、その力が周囲から恐れられているという事実もまた、彼女を孤独に追いやっていた。悠斗は、リーナがどのようにしてその力を得たのか、そしてなぜ周囲から疎まれているのかを知る必要があると感じていた。
ある朝、悠斗はリーナを誘って、王都の外れにある静かな公園へと向かった。そこでリーナがどのようにして魔法を学んだのか、その経緯を聞き出そうと考えたのだ。
「リーナ、少し話をしてもいいかな?」
悠斗はベンチに座り、リーナに静かに声をかけた。リーナは少し戸惑った様子だったが、悠斗の真剣な表情に押されてゆっくりと頷いた。
「もちろんです…何でも聞いてください」
リーナは、手元に視線を落としながら話し始めた。彼女が生まれたのはこの王都の郊外にある小さな村だった。幼い頃から魔法の才能を持っていたリーナは、その力を使って村人たちを助けることを夢見ていた。しかし、彼女の力が強力すぎたことが、次第に彼女を孤立させてしまった。
「私が初めて魔法を使ったのは、まだ幼かった頃でした。村で火事が起きて、その火を消そうとして必死で力を使ったんです。でも…その時、私の魔法が暴走してしまって、火を消すどころか、周囲の建物まで崩壊させてしまいました」
リーナの声には、深い後悔と悲しみが込められていた。その出来事が原因で、彼女は村から疎まれ、孤立することになったのだ。リーナはその後も魔法の力を制御するために必死で努力したが、周囲の人々は彼女を恐れ、距離を置くようになった。
「その後、私は魔法を学ぶために王都に来ました。ここでは少しは理解してもらえるかと思ったんですが…やっぱり同じでした。力が強すぎると、皆が恐れてしまうんです」
リーナの言葉を聞きながら、悠斗は彼女がどれほど苦しんできたのかを感じ取った。彼女の力は確かに強大であり、それを恐れる人々の気持ちも理解できるが、それ以上にリーナ自身がその力に苦しんでいることが分かった。
「リーナ…君が今までどれだけ辛かったか、想像するのは難しい。でも、君の力は決して悪いものじゃない。むしろ、それを正しく使うことで、多くの人を助けることができるはずだ」
悠斗は優しくリーナの手を取り、力強く言った。リーナはその言葉に目を潤ませながら、微笑んだ。
「ありがとうございます…でも、私はまだ自分の力を完全に制御できていません。もし、また暴走してしまったら…」
リーナの不安は尽きない。彼女が自分の力を恐れていることは明白だった。悠斗はそんなリーナに対して、何とかしてその不安を取り除いてあげたいと思った。
「リーナ、もし君が望むなら、俺たちと一緒にその力をコントロールする方法を探してみよう。君は一人じゃないんだ。俺たちが支えるから、恐れずに進んでみないか?」
悠斗の言葉に、リーナは再び涙を浮かべたが、今回はその涙には少しの希望が込められていた。
「…私、頑張ってみます。皆さんと一緒に」
リーナの決意を聞いて、悠斗は安心したように微笑んだ。彼らはこれからリーナの力を制御するために、何ができるのかを考え、行動することにした。
その日の午後、悠斗たちはリーナの魔法の訓練を始めることにした。彼女がどれだけの力を持っているのか、そしてどのようにしてその力をコントロールできるかを見極めるためだ。
王都の外れにある広い空き地で、リーナは慎重に魔法を使い始めた。最初は小さな火の玉を生み出す程度の力から始めたが、その火の玉はリーナの意志とは裏腹に次第に大きくなっていった。
「リーナ、落ち着いて!力を解放しすぎないように、少しずつ集中して!」
エリスがアドバイスしながら、リーナをサポートした。しかし、リーナはまだ力の制御に不安を抱えており、火の玉は一気に大きく膨れ上がり、危険な状態になってしまった。
「くそっ、これじゃダメだ!」
悠斗はリーナに駆け寄り、彼女を守るためにインフィニティグロースのスキルを発動させた。彼はリーナの力を抑え込み、火の玉を小さくすることに成功したが、リーナはその場に倒れ込んでしまった。
「リーナ、大丈夫か?」
悠斗が心配そうに尋ねると、リーナは息を整えながらも、疲れ切った表情で頷いた。
「ごめんなさい…やっぱり、まだ力がうまくコントロールできないんです」
「無理はしないで、少しずつでいいんだ。俺たちがついているから、一緒にやっていこう」
悠斗はリーナを励まし、彼女を支えながら立ち上がらせた。エリスとリュウも優しくリーナを囲み、彼女が安心できるように声をかけた。
「リーナ、焦らなくていいのよ。私たちは仲間なんだから、ゆっくり進んでいけばいいわ」
「そうだよ、リーナさん。僕たちがいるから、きっと大丈夫だよ」
リュウの言葉に、リーナは微笑んだ。彼女は少しずつだが、自分の力を受け入れ、そしてコントロールできるようになりたいという気持ちが芽生え始めていた。
「皆さん…ありがとう。私、もう一度頑張ってみます」
リーナは新たな決意を胸に、再び魔法の訓練を続けることを誓った。彼女の力が完全に制御できるようになるには時間がかかるかもしれないが、悠斗たちの支えがあれば、きっとその目標に近づくことができると信じていた。
その夜、リーナは静かな夜空を見上げながら、一人で考え事をしていた。彼女の心には、悠斗たちとの出会いがどれほど自分を救ってくれたのかという感謝の気持ちが溢れていた。
「私も、皆さんの力になりたい…」
リーナはそう呟きながら、手を握りしめた。彼女が持つ魔法の力は、確かに強大で恐ろしいかもしれない。しかし、その力を正しい方向に導くことができれば、彼女はきっと多くの人々を救うことができる。
「私の力を、皆のために使おう…」
リーナはその決意を胸に、再び仲間たちのもとへと戻っていった。彼女の持つ力が、今後の冒険においてどのように活かされるかはまだ未知数だが、彼女は確かに一歩を踏み出したのだ。
悠斗たちの旅は、まだまだ続いていく。異界の門や災厄の謎に迫るためには、彼らの持つ力と絆をさらに強めることが必要だ。そして、リーナがその一員として加わることで、彼らの冒険はさらに壮大なものになっていくに違いない。
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