第9話 竜との決戦
その時だった。突如地響きとともに、低い龍のような唸り声が、あたりを圧した。
「何?」
レムは、その声のする方を見た。が、当然城の中のため、何も見えるはずはない。
「今のは?」
「何かが……来る!」
ヴェルが叫ぶのと、それが姿を現したのはほとんど同時だった。
ドゴオオォォォォォンンンンンン!!!!!!!!!!!!
左の壁から、横一線に光が走る。
それはまるで壁をバターのように切り裂き、その向こうにいた何かを外に連れ出してきた。
「おいおい嘘だろ!?」
俺は目を剥いて叫ぶ。
壁を切り裂いて現れたのは、巨大な爪だった。そしてその付け根には四肢があり、胴体が続く。
その姿はまさしく──『龍』と呼ぶのが相応しいだろう。
「ドラゴ──」
「ヴェル、下がれ!!」
ヴェルを背後に突き飛ばしながら、俺は腰の剣を抜く。
「グルルル……」
龍は、低い唸り声を上げながらこちらを睨んでいる。その頭部で、何かがきらりと光った。
あれは……目? 龍が口を開けたかと思うと、その奥から氷結が噴き出すのが見えた。
俺がレムへ駆け寄ろうとするも、龍が俺を阻む。
「クソッ!」
俺は咄嗟に龍の攻撃を避けると、水晶龍は窓を突き破り外へと飛び立つ。
「くそ!あいつはどこから現れたんだ!!」
俺は悔しげに叫ぶと、突如龍が水晶のような爪で建物を引き裂いて瓦礫をまき散らす。
「危ない!」
俺はレムをかばって瓦礫から身を守りつつ、龍に問う。
「あいつはなんなんだ!?」
「あれは……水晶龍よ!!どうしてこんなところに!!」
「水晶龍!?」
俺がそういうと、水晶龍は突然水晶のような尻尾を振るった。水晶のような尻尾は、凄まじい速さで宙を裂き、俺たちを襲う。
「うおっ!?」
俺は水晶龍の攻撃に驚きつつ、レムを抱えて避けた。そして水晶龍は水晶のような牙を光らせながら俺たちに襲いかかる。
「くそ!なんて強さだ!!」
「ギャッ!!」
俺は水晶龍の攻撃から逃れようと走り回る。しかし、水晶龍は水晶のような鱗を光らせると、俺たちを囲むように水晶のような棘が地面から生えてきた。
「ぐっ!これじゃ逃げられない!!」
俺は苦虫をかみつぶしたような表情で、水晶龍を睨み付ける。
「くそ!どうすれば……!!」
俺は必死に頭を回すが、全くいい案が思い浮かばない。すると、水晶龍は水晶のような尾を振り回し、俺たちを粉々に叩き潰そうとしてきた。
「おまえは誰だ?」
「っ!?」
水晶龍の言葉に俺は一瞬固まる。竜が人間の言葉が分かるなんてありえない。
「おまえは、何者だ?」
再度水晶龍は言葉を発する。その言葉は低く、まるで大地を揺るがすような迫力があった。
「おまえは誰だ?」
水晶龍は俺の返答を待つように再びその言葉を繰り返す。そして俺は水晶龍の質問に対して答える。
「俺は、ソウマ。この世界の住人ではない。この世に迷い込んだ異世界人だ」
すると水晶龍は納得したようにうなずく。そして水晶龍は、ゆっくりとその巨大な翼を大きく羽ばたかせた。
「お前は竜の力を持っているようだが、竜と戦うつもりはないのだな?」
「戦うつもりはない、ただ俺たちは元の世界に帰るために力を求めている」
水晶龍は俺の言葉に対してうなずくと、その巨大な翼で水晶竜の足が地面についた。
「お前は竜の力があると聞く、ならば竜と人間が手を結ぶことを許す、力を貸してほしい」
「竜と人間が手を結ぶ……だと?それはいったい……?」
すると、水晶龍は水晶のような瞳を輝かせると、口を開く。
「竜と人間は過去に一度戦争をし、人間に敗れ力を失ったが、人間の中には竜と共存することを選んだ者もいる。そんな竜と共存した人間の中から竜人と呼ばれる者が生まれるのだが……。彼らは人間でありながら竜と交わることによって竜の力を受け継ぐ、そんな竜人たちを竜人選定の儀という儀式によって選別しているのだが……」
「それがどうしたっていうんだ……?」
俺は水晶龍の長い話を遮るように問いかける。すると水晶龍は言葉を続ける。
「ここは今、竜人選定を行うための場所。私の言葉と竜人の存在が明らかにお前にはあるため、私はお前の相棒として認めよう」
「あ、相棒?」
すると水晶龍は静かにうなずくと、水晶のような瞳を閉じた。
「私の力を授けよう……。私の力の名前は、『竜王』。私がお前に与えてやれる力は……竜王の権能……私の力の一部だ。」
そして次の瞬間、水晶龍は青白い光が発光するとたちまち小さく縮んでいった。その光が収まるとそこには、小さな水晶龍が立っていた。
「これは……ベビードラゴン?」
「その通り!!私の名前はアオちゃん!」
「え!?喋った!?」
「喋らないわけがないでしょ!!だって私、あなたの相棒なんだから!!」
「そ、そうなんだ……っていうか相棒ってどういうことなんだ?それと竜王って……?」
「それは後で説明するから、まずはこの城から抜け出さないと!」
「あ、そうだった!じゃあ一旦城を出ようか。」
「うん!」
そして俺たちは城の入り口へと向かったのであった。
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