第8話 脱出経路探し2

「そうだね」


俺はヴェルの話に納得した。なんか宝さがしみたいで楽しそうだし。


「レム、ちょっとだけこの部屋をあさっていいか?」


俺はレムに許可を得るため、レムのほうへ振り向き声を掛けた。レムはうなずくとドアのほうへ背を向けた。


「いいけど、物を壊さないで。大切な品がたくさんあるのだから」

「わかった。よーし、張り切って探すとするか!」


俺とヴェルがうなずくと早速仕掛けを探しに周辺を探し始めた。


5分後。


「ないな」

「うん、ないね」


俺とヴェルはレムの部屋をほぼ全て探してみたが仕掛けになっていそうな切込みやひもなどのスイッチのようなものはなかった。それよりもレムの部屋がきれいすぎるため探すペースが速く、5分間で終わってしまった。


「くそ、どこなんだ」

「知らないよ。それよりもヴェルさ、ちゃんとあの時探してた?」

「ギクッ」


ヴェルは度肝を抜かれたような動作をすると、口笛を吹きだした。俺は今のヴェルの行動にじーっと白い目で見つめながらため息をつく。


「なんだっけ~?本棚近くの壁を触り続けているからなんだろうと覗き込んだら、埃の付いた壁でお絵かきをするわ~、急に立ち上がったらレムのお気に入りのガラスのマトリョーシカを落として壊すわ……」

「やめろー!!俺の痛々しい悲劇を!!」

「見てみろ。レムの今の姿を」


俺が言うとヴェルはレムの方向へ振り向いた。レムは真っ青な顔でただ割れたマトリョーシカを見つめて固まっていた。ヴェルはレムの姿に数秒見つめると、鉄さびがこすれあうよう直人が出るようにゆっくりと俺に顔を向けた。ヴェルの今の顔は……もう真っ青。


「あれを……どうしろと?」

「しらね。ヴェルの責任だろ?」

「う……」


ヴェルはそう言われると言い返せず、そのまま固まり続けて30秒くらい経った。俺たちはレムの方向へ体を振り向くと、レムは俺たちがこちらを向いていた。レムは少しビクッと驚いた後俺たちに向かって言う。


「あの……大丈夫です……よ……こちらが悪いから……」


レムは涙目になって俺たちにそう伝えた。俺は少しうろたえる。


「い、いや、そのヴェルがやったんだけど……なんかごめん」

「ソウマ!?そこはお前が……!」


ヴェルは俺の肩を掴んでゆさぶる。そして俺たちは再び顔を青ざめてレムのほうへと向くと、レムは泣き崩れていた。俺とヴェルは必死に慰めたのであった。


「えっと……すみませんでしたぁ!!!」


ヴェルはレムに土下座して謝った。


「い、いえ……大丈夫ですよ……私があの時周囲を確認していれば……」


俺たちがそうしているとヴェルが慌てて頭を上げる。


「いや、あれは俺が悪いんだ!だからもうやめてくれ!」


ヴェルはレムの悲しげな表情を見かねて泣き出した。その様子を見たレムは言う。


「わかったから……もうやめて……?」


******


「……で、これからどうするんだ?」


ヴェルとレムが落ち着いた後、俺は二人に向かってそう言った。するとヴェルは答える。


「そうだな……レム、お前の能力が知りたい」


ヴェルがそういうと、レムは驚いた表情をする。


「私の……能力?……」

「そうだ、お前の能力が分かればもしかしたら仕掛けのヒントになるかもしれないからな」

「……わかったわ」


レムはゆっくりと口を開き能力について話し始めた。


「私の能力は『超越』。自分や相手の能力を一時的に倍増させることができる能力よ」


レムがそういうとヴェルは頷きながら言う。


「なるほどな、それがお前の仕掛けを解くヒントになるということか。じゃあ早速この城から脱出して仕掛けのヒントを探しに行くか。」


「そうだな、レム。これから危険が伴うかもしれない。俺とヴェルの傍から離れないでくれ」

「ええ、わかったわ。二人ともありがとう……」


レムは目を少しこすりながら俺たちに礼を言った。そして俺たちは脱出に向けて準備をし始めた。

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