第6話 少女

「おーい!誰かいるなら返事してくれ!!」


ヴェルの叫び声が城の中に響き渡る。俺は、その声がこだまする中ただ呆然と立ちつくしていた。


「誰かいるのか?」


俺は引きつったように顔をヴェルに向けると、ヴェルは頷く。そして俺たちは声のした方向に向かっていった。するとそこには、


「おーーい!!誰かいるなら返事してくれ!!」


ヴェルの声がこだまする中、俺は呆然と立ちつくしていた。ヴェルの目の前には瓦礫の山が……いやその山の上でなんと手を振っていたのである。しかも服装から見るに俺たちと同じ人間だ。しかしその人の姿はまるで人間と言うよりかはエルフのような姿だった。


「おい、大丈夫か?」


ヴェルはそう問いかけると、その女はゆっくりと頷いた。ヴェルは続けて言う。


「今助けてやるからな」


そういうとヴェルはその瓦礫の山から女を引っ張りだそうとする。しかし……


「うぐ……」


ヴェルは、その女の引っ張りだそうとするが、その女の体はびくとも動かない。どうやらこの瓦礫の山に体が埋まっているようだった。


「ソウマ、お前ならあの瓦礫をどけることができるか?」


俺は少し戸惑ったが、すぐに答えた。


「ああ、多分できると思うぞ」

「よし、じゃあ頼んだぞ」


俺はヴェルに言われると、瓦礫の山へと足を運び、女の埋まってる場所までたどり着く。そして俺はその女はまっている瓦礫を一つ一つ丁寧に取り除いていくのであった。


「よし、あと一つだ」


俺がそうつぶやくと、その女は少し顔をほころばせた。しかし……


「うぐ……」


最後の一つの大きな岩を取り外そうとするがなかなか取れないでいた。すると……


「ソウマ、俺に変われ」


ヴェルは俺の前に来て、俺の代わりに岩を取り外そうとする。しかしヴェルは女と同じようなうめき声をあげると、その大きな岩はびくともしないようだった。


「ぐっ……」


俺はどうすることもできない自分の情けなさに言葉を失う。


「がんばれ!もう少しだ!」


ヴェルは、その女に向かってそう叫ぶが女はもう限界のようであった。


「ヴェル、ちょっとどいてろ」


俺はヴェルの肩を叩くと、ヴェルを押しのけた。そして俺は身体を構えると……


「闇の神よ、我に能力を授けよ……。ダーク・オブ・ザ・シューディ!!」


俺がそう叫ぶと、俺の左手が黒く輝き始めた。そして……


「おら!!」


俺はその大きな岩を思いっきり、もぎ取った。すると瓦礫の山は一瞬にして消え去ったのだった。


******


「ありがとう……助けてくれて……」


女はそんな丁寧な口調で俺に礼を言う。俺は少し照れた感じで返答した。


「いやいや、礼なんていらねぇよ」


そう俺が言うと、ヴェルはその女性に質問を始めた。


「ところであなたはここで何を?」


ヴェルがそう聞くと女性はこう答えた。それは衝撃の答えであった。


「……私はこの城で生まれ、ずっとここで暮らしてきた」

「え?」


俺はその答えに驚いた。そしてさらにヴェルは質問を続ける。


「でも、もう誰もいないはずでは……?」

「私はこの城で両親と兵士たちで過ごしてきたわ。でも……ある日私の目の前に突然黒いローブを羽織った人物が現れたの……」

「黒いローブ?」


俺がそう言うと女は頷く。


「……その人は私に向かってこう言ったの『お前はこの世界を壊すために生まれてきた』とね」

「世界を壊す?……」

「ええ、でも私にはそんな力には敵わない。だから私はずっと怖かった」


そんな女がなぜ今ここに?そして黒いローブを羽織った人物は一体……

俺はその疑問に少女はこう答えた。


「その黒いローブの人物は……っ」

少女は後の言葉に青ざめながらガタガタと震えていた。ヴェルの方からガリっと音がしていたため向くと、歯ぎしりをした怒るヴェルの姿があった。


「ソウマ、そいつは俺たちを無の世界へと化していたものだ。俺たちの場合も少女の言うような化け物と両親が消えていく前に言っていた。」

「……」

「俺は………そいつを許さない、許すことができない」


ヴェルのその本音は本当だと俺は悟った。ヴェルの怒りの通り、俺もヴェルと少女の精神をここまで追い込んでしまったことに自然と怒りが沸いてくる。たとへ、その黒いローブの人物がこの無の世界に関わっていたとしても許すことができない。


「ヴェル、俺、君と一緒にローブを羽織った人物をぶっ潰すよ」


俺は、にヴェルそう叫んだ。ヴェルはその言葉に反応する。


「お前、俺と一緒にやってくれるというのか?」


俺は大きく頷いた。


「ああ、ここまで聞いておいて知らないふりなんて男としてダサいよ。それにまだ俺の力は奴にとって弱点になるかもしれないしな」


俺はにやけながらヴェルに向かってそういった。


「ああ、よろしく頼むぞ」


ヴェルはそう返すと俺の肩に手を乗せた。そして少女は俺とヴェルに向かって言う。


「私も……力を貸すよ!一人はもう嫌だから……」


少女は俺の手をぎゅっと掴みながらそう言った。俺はその少女の手の暖かさに胸を高鳴らせるのであった。

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