第4話 今後のため
俺はあの後、10分ぐらい無防備に立っていた。神様に与えられたこの場所の事実、俺は神様が何か意図があるしかないと思っていた。
神様は俺に異世界転移じゃなく電脳空間にきたと言ったが、なぜ神様が俺を電脳世界に連れて行ったのか。それも一文無しで。あはは、自分で言うのもあれだけど冷静だな、自分。
電脳世界は、人が生きる世界ではない。ただ電子の海の中にあるデータだ。
俺が神様が言った通り、この世界はファンタジーとは違う世界なのかもしれない。
もしそうだとしたら……。
「この世界でも小説のようにスローライフを送ることが一番の安全策というべきか……か?」
ラノベの世界で生きている主人公たちは皆、スローライフか国のやり直しなど様々なものを目指している。だが、現実的に考えるとそれは無理だな。
俺は、この電脳世界での生活を生きるためにどうすればいいか考えないといけないのだ。このままどん底に生きて飢えて死んでもいいのか?
……そんなのは嫌だよ。じゃあ、この世界で何をすればいい?
「……俺の状態を調べるかないな」
まずは転生による体の変化だ。手足が小きく、細いことがわかる。服の中も見慣れないほど筋肉が発達していた。背中には立派な漆黒の大きな羽とドラゴンの尻尾がある。
顔がどうなっているのか見ようとあたりを探してみると近くに水たまりがあった。俺は地下好きゆっくり水面を見る。
「…………若返ってる」
東京にいた時の俺の歳は20歳。しかし、水面に映る少年はイケメンの高校生だった。
一目でわかるほどに凛々しい輪郭。輝くほどに綺麗な銀髪ロングと鋭いウルフの耳。黄金の猫の瞳にと小さな牙。俺の作ったアバターそのものの顔だった。
着ている服も黒の半袖コートに黒のズボンだ。腕や、足に輝く金属のような靴とアームの防具が付けている。まさに、アクションファンタジーRPGに出てくる主人公の恰好そのものだったそのもの。年齢も種族も変わってるぐらいだから、服が変わっててもおかしくない。
腰の重みが気になったので服をめくってみると輝かしい漆黒の剣があった。
「おお......!!」
俺は初めて見る剣に思わず声を上げた。かっこいい。その一言だ。剣は鞘から抜いてみると、刀身が黒く、刃の部分は銀色に光っていた。
「すごい……!!」
俺は思わず剣を振り回した。しかし、すぐにバランスを崩して地面に倒れてしまった。
「いてっ」
どうやらこの体はまだ使い慣れてないらしい。それに、俺の作ったアバターだから運動神経も悪いのだろう。
次はスキルについて。神様からいろいろ教えてもらったけど、肝心のスキルの質問をすることを忘れていたよ。シャドウと書かれているから闇魔法なのかもね。俺は詳しく見るため、スキルに詳細と書かれていた部分にタップした。
【スキル】
シャドウ・エクリプス
・スキル番号 S10205 レベル205
。能力内容:闇の力を一時的に身体の一部に増大されることができる。また、現在も亡霊の宴が引き続き使用可能
亡霊の宴
・スキル番号 A1066 レベル200
・能力内容:周囲に闇の空間を作り、亡霊を召喚する。亡霊を思い通りに動かすことができる。
俺が大学生のころにのめりこむほど夢中だったSGO。俺はその中で、闇魔法を使うことが一番の楽しみだった。ここで、このゲームの特徴をまとめておこう。
・アバターを自由にカスタマイズできる
・全プレイヤーは与えられたワールドで好きなように世界を動かすことができる(ただし、モンスター0や植民地化などの残酷なことはサーバーの事情のため不可能)
・魔法なども設定でき、自身が成ってみたい方向に成り上がらせる
俺は、このワールドで闇の王として君臨し、自分の国を作るのが夢だった。そのため、闇魔法は真っ先に選択した。
しかし、スキルに記載されている「亡霊の宴」という能力には見覚えがない。神様は教えてくれなかったのかな? まあ、とりあえず使ってみよう。
ギュウウウウゥゥウゥンンンンンン!!!
「うわああああああ!!!!!!!」
まじかよ、これ。
俺は、自分の右手の甲に闇の空間を作り出した。そして、そこから3メートルはある大きな亡霊の頭が出現したのだ。これ、絶対キケンなやつだろ。
『グオオオォオ』
「うわああ、ごめんなさい! すぐ消すから!」
俺がそう叫ぶと、亡霊の頭は闇の空間の中に吸い込まれていった。俺はすぐにスキルを閉じたが、この能力は俺の想像していたものとは違ったな。でもまあ、ゲームではよくあることか。とりあえず使ってみて考えよう。
周辺を眺めてみると、アニメから出てきたのか?と思わせてくるような廃墟の町だった。あちらこちらで焼けて黒くなった木々やがれきのレンガ塀、そして石造りの家屋や道、建物などが所々に立ち並んでいる。推測によって俺は今、町の中央付近にいるようだな。
次に世界のことを知るべきだ。俺は、この世界のすべてを知るため一歩足を動かしだした。
というか、俺以外にも人がいるのか?そう考えてるとなんだか怖くなってきたよ。おーい、誰でもいいから出てきてくれよー。……と言ってもこれが獣に襲われるフラグになりませんように。
「さてと……」
俺は、前にだけ目を集中させながら一歩一歩と足を動かしていく。
「誰かいるかい?いないよねー、あははは」
「おいっ、何一人でぶつぶつ言ってんだ?」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
俺は急に声をかけられて、思わず悲鳴をあげた。
「あぶねーな、いきなり叫ぶんじゃねえよ!」
俺は後ろを振り返る。そこには、俺と同じぐらいの若い男性が立っていた。
その人は俺より身長が高く、体型は細いが鍛えられていそうな体をしていた。その人の髪は黒く、目や肌の色などは日本人と同じであった。
しかし、服装はまるでファンタジーの世界にいるかのような中世ヨーロッパ風といった感じ。
びっくりしたよ、これでもし中年の喧騒が悪いおっさんだったらオワタと思っていたから。
「おい、お前って帝国の剣士か?」
俺の戸惑いが長くなりそうだ。
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