10話 真犯人
あの後数日が経過したが、体が元に戻ることは無かった。体を元に戻す為に、色々な事をしてみた。まず
最初の友達を作る案。もう一度花壇に願ってみる…などなど
そんなこんなで初登校から約1週間半が経ったある日僕は毎日鏡の前に立って体に変化がないかを見るのが日課もなっていた。
今日もいつものように男に戻っていることを期待しながら鏡を覗いてみる。
やはり女のまま。
…ん?顔に違和感を感じる。具体的には目。
元々は男だった時と同じく、若干茶っぽい黒目をしていた。のだけど、今日見てみると碧眼…要するに西洋人のような、澄んだ青の綺麗な色だった。
いやまて…なんでそこが変わるんだ…?
僕が願ったのは男に戻りたい。そう願ったはず…
いや間違えるはずがない。もしや良くない事が起きる前兆なのではないか…?
良からぬ想像が容易に出来てしまう。震えが止まらない。
◆
当然瑠奈が気づかない筈もなく、僕の目について指摘される。指摘されたところで僕も何も知らない。
…今日もう一度花壇に行ってみるか…
学校に着いた時に他の人から変な目で見られるのでは…そう思っていたが、案外そうでは無いらしく、
カラコンだと思ってる人もいれば、変化に気づいていない人も居た。
僕としても目立つのは苦手だから、これは好都合…!
お昼休憩の時間に花壇に向かう。いつもは雫さんが居るのだが、今日は珍しく居なかった。
その代わりに中学生程に見える少年が居た。
その少年は何か不思議な雰囲気を漂わせた人だった。
どこか儚く、どこか神秘的な雰囲気。しかし年齢
相応…?なやんちゃな雰囲気も覗かせている。
その少年はこちらに気づいたのか、こちらに視線を
移してくる。
「おや…お前は…佐藤未来…だったか?」
どうやら僕の事を知っているようだ…何故だろうか?
「は、はい…そうですけど…どこかでお会いしましたっけ…?」
「お会いしたも何もお前を女にしたのは俺だからな!」
…???何を言ってるんだ?この少年は。頭でも打ったのだろうか?
「お前は元の体に戻りたいと加えて願っていたな?
ならばなぜ君は瞳の色が変わった?俺が変えたからさ。」
続けざまに少年は言う。いや待て…なんで僕の願い事のことを知っているんだ…?それに瞳…目の色についても何故知っているんだ…?
「…?あなたは一体…」
「俺か…君たちが言うこの学校に住み着いた霊…
とでも言おうかな…?」
「いや…えぇ…?頭大丈夫?」
「お前に言われたくは無いわ!その見た目を悪用して女とイチャつきやがって…」
「いやあれは向こうが勝手に…てか本当に君が僕の体を変えたの?その話が本当なら元の姿に戻してよ!」
「出来ないぞ。」
「え?」
「いやだから出来ない。」
「え?なんで?なんで?」
「あーっとな…?お前の姿を変えたからもう俺の力は
残ってない。最後の余力もお前の瞳の色を変えるのに使ってしまったからな。」
「…は!?なんでそんなしょうもないことに力使ってんの!?」
「しょうもないこと…まあ俺としても、もうこの世に未練はないから成仏できるならしたいしな。
しかし…お前には悪いことをしたとは思っている。
だがな、お前だって最初の目標を達成出来たんだろう?」
「…確かに友達は作れたけどね?それ以上に失った物が多すぎるんだよ!!だから戻して!」
「戻せないと言っているだろ?
そんな涙目になりながらねだっても出来ないものは
出来ないんだよ。分かったらさっさと帰ってくれ。
俺としてもこの世を去る準備をしなければいけないんだ。」
酷く無愛想に対応された僕は泣きそうになりながらも教室へと帰った。
◆
教室に着くと弁当を食べ終わったらしい瑠奈がこちらに駆け寄ってくる。…ついでだから現状を瑠奈に共有してしまおう…
「┈┈つまり…お兄ちゃんは元に戻れないかもしれないって事だよね?それって結構ヤバくない…?」
「確かにヤバいな…ヤバい。うん。」
「まずさ、戸籍とかってどうするの?今はまだその場つなぎでどうにか誤魔化せてるけど、これから先は
ヤバくない…?」
あーヤバいってそっちの方でか…ん?ヤバくね?
「戸籍はまあ…どうにかできるかもしれないけど、
元のお兄ちゃんはどうなるの?急に人が行方不明なんかになったらそれこそ大事件だよね…」
あー頭が痛い…難しいことは考えたくないぞ…
今はとにかく目の前の問題をどうにかしよう。そう、戸籍だ。戸籍…記憶喪失の子供を養子に取った…とかでどうにか行けないだろうか…?
いや行けるかもしれない…真相は神のみぞ知る…と言うやつだ。
ぼーっとしてしまっていたらしく、瑠奈に体を揺さぶられる。
「まあ…そうだね、戸籍については家に帰ってから、
お母さんに相談してみよう?」
まあ、それが一番安定択だよね。
◆
放課後、元に戻るのを諦めきれない僕は例の花壇へと、今度は瑠奈も連れて向かう。
が、そこに居たのはあの少年ではなく、ちっさい犬が居た。
「おい、佐藤未来!お前の家まで俺を連れてってくれないか?」
え?犬が喋った…!?というかこの口調…さっきの
少年にすっごい似ている。というかほぼ一緒。
まさか…この犬があの少年なのか!?
性転換をさせられるなら、犬になるのだってできるはず…ファンタジー…
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その少年もとい、犬が言うには成仏するつもりで事を進めていたのだが、結果失敗。元の体はその時に失ってしまったらしく、近くを歩いていた野良犬に憑依…
に近いものをしたらしい。
…いやファンタジーすぎない?霊がいる時点でだいぶファンタジーなのに…
で、この犬は僕たちの家に住み着くつもりらしい。
いや何故…?と聞く前に、理由を説明されたのだが、
どうやら実体となってしまったから、食事を摂らないと死んでしまうらしい。
なので僕たちの家に住まさせろ。と言ったことらしい。まあ、悪い奴では無さそうだし、僕は良いのだが瑠奈は…隣を見ると犬を屈んで撫でている瑠奈が目に入る。瑠奈は賛成らしい。
よし、なら決まりだ。お母さんも…まあOKしてくれるだろう。こんなに口の悪い奴でも根はいい奴なのだろう、今は静かにしている。
◆
家に着いてお母さんに聞いてみる。二つ返事でOKしてくれた。…そういえば名前聞いてないな…
「ねえ…犬?名前ってなんていうの?」
「あ?犬だと?舐めやがって…名前は無い。無くても困らないからな。ああそうだ、名付けてくれるなら
喜んで名乗らせて貰うぞ?」
「うーんそうだね…ゴンザレスとかっt」
「…却下だ。ふざけているのか?」
「人がせっかく考えてあげたのに…酷いじゃん?」
「ならさ!シロとかどう?」
横から瑠奈が割り込んでくる。
「シロ…か。いい名前だ。」
こうして僕を性転換させた犯人と暮らすことになった
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ちなみに少年とは言っていますが、本人から言及は無いので、今のところは性不詳です。
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