意味

 ダンとベルという双子がいた。あるとき、ベルが言った。

「どちらがより重くなれるか勝負しよう」

 ダンは快く引き受けた。ベルも鼻息を荒くした。“1年後にまた会おう”と言って2人は別れた。

 ダンは身体を重くするため、筋トレをし始めた。彼は限界まで身体を痛めつけ、回復したらまた痛めつける、という生活を続けた。一方、ベルはたくさん食べまくることで体重を増やそうとした。彼は限界になるまで食べ続け、またおなかに空きができたら食べ始める、という生活を続けた。

 1年が過ぎ、ついに勝負のときがきた。しかし、決戦場には誰も来ない。野原の草がさらさらと揺れる音だけが聞こえた。


 ダンは筋トレのやりすぎで身体中の腱を壊してしまい、歩けなくなっていた。ベルもまた太りすぎで膝を壊してしまい、歩けなくなっていた。2人はベッドから離れることもできず、ただ天井を眺めることしかできなかった。2人は思った。

「なんでこんなことしてたんだっけ」


 意味のなくなった体重計が自分の出番はまだかと、ただ1人うずうずしていた。

 

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