タイムキーパー
人が悪い選択をするときは、なんとなく直感でわかるもんだ。目玉焼きにしょうゆをかけるかソースをかけるか、暇だからゲームをするのか読書をするのか、気になるあの娘に声をかけるのかかけないのか、この会社に入るのか入らないのか。すべての選択が自分の人生を形作る。正確に言えば、選ばなかったほうの世界が消えるってこと。それは想像になり、妄想になり、夢になる。
どちらを選んでもいいときもある。しかし、そうじゃないときもある。いい未来か、悪い未来かのときだ。そういうとき、俺らはなんとなく良くないほうを感じ取れる。でも人は、俺はバカだから、いつも悪いほうをとってしまう。いい方をとれば人生がうまくいくのに、31歳ひきこもりから脱却できるのに、家族が喜ぶのに、幸せになれるのに。なんとも難しい話だ。
もし、あのとき選択を間違えていなければ。もし、あのままあの職場で働いていれば。もし、あのクソガキにぶち切れていれば。もし、もし、も……
そんなことの連続だ。時間は止まってくれない。人も、街も、社会も、この世界も。遅れたやつは置いていかれるだけさ。せせっかしい世界だなぁ。
そこで俺はこう考えた。世界を遅らせればいいんだ、と。時間をぜんぶ、俺に合わせるようにしようと。そうすれば焦って生きる必要もなくなる。俺よりゆっくり生きている人間などいないだろうから、置いてけぼりにもならない。なんと画期的なことか。
そうすることにした彼だった。
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