第7話 短編の構成(蓮条バージョン)

 昨日、『ほしレモン』さまから(コンテスト向けの)恋愛小説の短編の書き方が知りたいとヘルプ要請があったので、

 蓮条の助け舟でいいのかは分かりませんが、

(本拠地で)短編コンテストで賞を取った10代女子向けの作品を分解して説明しますね


 まず、短編を作るに当たり、およそ3万文字前後で仕上げねばなりません

 本拠地だと、32000文字以内というコンテスト規定があるので、大体3万文字強くらいで纏まるようにしています


・長編と同じで、入りはマイナス展開からスタートします

・4章から5章くらいで纏める

・キャラの設定や舞台の設定は難しくせず、できるだけ分かりやすい設定が好ましいです(地の文で表現する文字数を極力制限します)

・章と章の間、視点切り替え、時間の流れをコンパクト且つ綺麗に纏めねばなりません(ゆっくりと順を追って展開するのは短編には不向きです)

・個性のあるキャラが2~3人必要(短い文章の中でキャラ立ちさせねばなりません)←性格だけでなく、体型や口調など、工夫を凝らせばOK

・長編と同じで、統一感は忘れずに


 ざっとあげてもこれくらいは気にかけながら書くのがよいかと。


 外堀の話だけではコツが掴めないと思いますので、今回は具体的に説明して参ります


 ほしレモンさまが学生ということもあるので、

 本拠地の姉妹サイトで今年の5月に受賞した作品でご説明しますね

 コンテストのテーマは『梅雨とアンニュイな彼』

 6月が梅雨入りということもあって、5月度のマンスリーチャレンジのものです


 主人公のヒロインは高校2年生、兵庫県丹波篠山という城下町で生まれ育ったごくごく普通の女の子。7歳上の姉には聴覚障害があり、幼い頃から姉と会話するために手話を覚え、心根が優しい性格。

 姉は2年前に結婚し、今夏に出産を控えている。その姉と姉の夫が経営する、駅のコンコースにあるカフェで、姉の代わりにバイトをすることになったところから物語がスタートします。


 主人公のヒーローはイケメンで18歳、自宅は東京だけれど、大病を患っていて、手術前の休息にと丹波篠山にある祖父の家に身を寄せている。


 駅のコンコース内に置かれているストリートピアノを、毎日のようにカフェのテーブル席から無言で何時間も眺めている青年。彼は、幼い頃から音楽が好きで、ピアノコンクールで毎年のように受賞していて、有名プロデューサーの目に留まるほど、歌も上手い青年だった。だが、咽頭がんが発覚し、その美声も失い、生きる意欲も消えかけていた。


 ピアノを見る度に切なくなるのに、毎日弾いていた幸福感をゼロにはできなくて、何時間もピアノを眺めている。

 本来であれば高校3年。夏に手術を受けることになっていて、春から高校を休学していて、祖父の家で心の整理をつけていた。


『梅雨』という時期にかけて、雨の日限定で、彼はコンコースのストリートピアノを弾く。(祖父の家にはピアノがない)

 雨が降ると、駅構内がいつもよりも騒がしくなるため、その雑踏に紛れるように静かにピアノの音色に叫びたい心の声を乗せて―――。

それを、カフェの中でバイトしながら聴く、ヒロインという設定です。


この作品は、『雨声~形のないラブレター』というタイトルで、彼の心に寄り添う物語です。


 ちょっと説明が長くなりましたが、

 ➀梅雨

 ②駅のコンコース(ピアノとカフェ)

 ③アンニュイ(声が出し辛く会話したくない彼は、心を閉ざし、無愛想)

 ④聴覚障害の姉がいるため、喋れない=耳が聴こえないと勘違いし、接客する時に手話で話しかける(思い込みで)

 ⑤イケメンだからついつい見惚れてしまうし、物憂げな表情と切ないメロディーがヒロインの心に刺さる

 ⑥丹波弁の方言を物語のアクセントに、接客する時は頑張って標準語。彼と2人きりの時は素で方言が出るという設定。


 難しいのは接点の取り方と、間の詰め方、気になる存在から恋人へと展開するまでの焦れ感ときゅん感。


 大事なのは、お互いの気持ちを理解したうえでの接し方の描写と、出会いから成就までの時間を3万文字で纏めること

 成就したあとの展開は、想像の余地にして、余韻を残す程度でOK


 蓮条が付けたのがこちら (『』←カッコ内のが章タイトルです)

 ➀『栗花落(ついり)』……栗の花が散る頃に降る雨、梅雨のことを示す

 →梅雨入りの時期に出会ったことから

 ②『煙雨(えんう)』……煙のようにかすんで降る雨

 →手話で逆ナンパ?的に好意を表すも、しれっと流されてしまう

 ③『驟雨(しゅうう)』……急にざっと降り出して、暫くすると止んでしまう雨

 →意を決して謝罪しようとするも、トドメとばかりに突き放されてしまう

 ④『霖雨(りんう)』……何日も降り続く雨、真夏の前に訪れる、恵みの雨 

 →ヒーロー視点で、いつの間にか心に入り込んでいるヒロインへの想いに気付く

 ⑤『催涙雨(さいるいう)』……七夕に降る雨、雨で会えなくなった彦星と織姫が流す涙と言われている

 →心の休息を終え、手術をするために東京へ戻ることを伝える。ヒロインは彼の無事を祈り涙を流す

 ⑥『私雨(わたくしあめ)』……局地的に限られた地域に降る雨

 →抗がん剤の治療も終え、1年ぶりに丹波篠山の地を訪れたヒーロー。

 ヒロインがバイトしている時間帯に、サプライズでストリートピアノを弾く。ヒロインにだけに伝わる雨音に乗せた、形のないラブレター。(無事を知らせる音色)


 6章とちょっと多めですが、紆余曲折するラブ展開を10代女子目線で書いた作品なので、くどくなくサラッと、それでいて思いやりの心はしっかりとベースに刻んである作品です


 気が向いたら、こちらに引っ張って来ようかと思いますが、

 いかんせん( ̄▽ ̄;) コピペするのも面倒で(笑)


 オトナ女子向けの短編もあるんですけど、それは次の機会にw

 2000文字超えたしね、そろそろ締めましょうかね


 この作品は見知らぬ男女が気になる存在から、いい感じの雰囲気になり、

けれど、高校生という設定なので、簡単に兵庫と東京を行き来できるものではなく。

また、がん治療をする彼に、しつこく病状を聞くことも出来ず、1年という時を経て、と恋のをかけているものです。

『雨』って、ちょっと鬱々した気分になったり、苛ついたりしがちですが、

『雨』が降るのが待ち遠しくなる、そんな乙女心に着眼した物語です


 恋愛小説だからと、ラブラブ展開てんこ盛りでなくてもいいのです

 約3万文字の中で、恋の変化がきちんと描かれていれば。

 この作品のヒーローは、アンニュイ感があるので、あまり個性的なキャラではありません。ヒロインの方が何倍も魅力的に感じるかと思います。

 ただそれではきゅんもドキドキもないので、無愛想な彼が少しずつヒロイン色に染まり、刺々しさが削ぎ落されてゆく模様を描きました。 


 ちなみに、この作品、構成2日、入力1日、たった3日で仕上げました(笑)

 通年お花畑の腐ってるような蓮条の脳でも書けるので、大丈夫ですよ~~

 ほしレモンさま~~まだコンテスト開催すらされてませんから、

まだまだ十分間に合いますし、1作と言わず、何作も紡げますよ~~

UPされましたら、お邪魔させて頂きますからねぇ~~


 本日は、長々と失礼致しました

 皆様に素敵な時間が訪れますように

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