第22話  模擬戦当日⁉決戦の幕開け!

 模擬戦当日、朝日が昇ると同時に、王宮の空気は緊張感で満たされていた。ステラとリリカは早朝から準備を整え、特注の対魔法メイド戦闘服に着替えた。客人用の宿舎を出て、練習場へと向かっていた。彼女たちの表情には、決意と覚悟が宿っている。


「ステラさん、いよいよ今日だね。」


 リリカは隣にいるステラに声をかけた。ステラもまたリリカに微笑み返しながら、静かに頷いた。


「ええ、リリカ。私たちがこれまで積み重ねてきたものを、今日ここで見せる時よ。」


 格闘場には、すでに王や王宮の関係者、騎士団の団員たちが集まり、二人の登場を待っていた。騎士たちの間からは期待と緊張の視線が注がれ、彼らの真剣な表情が二人にプレッシャーをかけている。しかし、ステラとリリカはその視線に負けることなく、まっすぐに前を見据えて歩き続けた。


「リリカ、ステラ。今日は全力で戦ってきてね。」


 アレクシスが二人の前に立ち、力強く励ましの言葉をかけた。彼の言葉に、リリカとステラは力強く頷いた。


「ありがとう、アレクさん。私たち、やってみせます!」


「アレクさんの応援があるから、もっと頑張れるよ!」


 二人はアレクシスの手を握り、最後のエールを送り合った。アレクシスもまた、二人に自信を持たせるように優しく笑った。


 練習場の中央には、騎士団長のガレッドと六光の騎士たちが並んでいた。彼らは統率のとれた姿勢で立ち、その威厳ある佇まいに場内は静まり返っていた。ガレッドはステラとリリカに視線を送り、低く鋭い声で語りかけた。


「ステラ隊長、リリカ副隊長。今日の模擬戦は、君たちの力を示す絶好の機会だ。我々は手加減はしない。全力で君たちを迎え撃つ。それが我々の流儀だ。」


 リリカとステラはガレッドの言葉に真剣な表情で頷き、気持ちを引き締めた。彼女たちの目には恐れはなく、むしろこの試練を乗り越える決意が強く宿っていた。


 戦闘開始の合図が鳴り響くと、場内は一瞬の静寂に包まれた。そして、ステラとリリカは同時に動き出した。リリカは光の魔法を放ち、閃光が練習場を照らし出すと同時に、火の魔法で攻撃の連鎖を繰り出した。


「ステラさん、今がチャンス!」


 リリカの声に応じて、ステラは水の魔法を用いて流れるような攻撃を仕掛ける。水の刃が空気を切り裂き、ガレッドと六光の騎士たちに迫る。しかし、彼らは冷静に動きを見極め、瞬時に防御の体勢を整えた。


「さすがに一筋縄ではいかないわね…!」


 ステラは悔しそうに表情を曇らせたが、すぐに気持ちを切り替えた。リリカもまた、連続して攻撃を仕掛けながら、次の動きを考えていた。


 模擬戦は激しい攻防が続き、どちらも一歩も譲らない状況が続いていた。リリカの光と火の魔法がガレッドたちの動きを封じ、ステラの水の魔法がサポートと攻撃の両方で効果を発揮していた。二人は互いの動きを把握し、絶妙なタイミングで攻撃と防御を切り替えていく。


「リリカ、次は右側の騎士を狙おう!」


 ステラが指示を出し、リリカはすぐにそれに応じた。二人は集中力を高め、ガレッドの背後を突くように攻撃を繰り出した。水と光が一体となり、強力な一撃が放たれる。


「いいね!、ステラさん!」


 リリカが声をかけ、ステラも笑顔で応えた。しかし、ガレッドと六光の騎士たちもただでは終わらなかった。彼らは素早く反撃の体勢に入り、リリカとステラの攻撃をかわしつつ、反撃のチャンスを窺っていた。


「油断は禁物だぞ!」


 ガレッドが声を上げると同時に、六光の騎士たちが一斉に攻撃を仕掛けてきた。鋭い剣の一撃がステラを狙い、魔力の矢がリリカに向かって飛んできた。ステラは瞬時に水の壁を作り、剣撃を防ぎ、リリカも素早く閃光で矢をかき消した。


 戦闘は一進一退の攻防を繰り広げていたが、次第にガレッドと六光の騎士たちの連携が本領を発揮し始めた。彼らはステラとリリカの動きを読み、二人の隙を突こうとしていた。


「ステラ、後ろから来るよ!」


 リリカが叫び、ステラはすぐに防御の体勢を整えた。しかし、その瞬間、ガレッドが不意に距離を詰め、リリカの懐に飛び込んだ。リリカは反応が遅れ、一瞬の隙を突かれてしまった。


「くっ…!」


 リリカはすぐに体勢を立て直し、ステラがカバーに入ったが、ガレッドの動きは鋭く、彼の攻撃は止まることを知らなかった。六光の騎士たちもまた、連携を崩すことなくステラを攻め立てた。


「まだ終わってないわ!」


 ステラは叫び、再び全力で攻撃を仕掛けた。リリカもその声に応えるように、光と火の魔法を強化し、二人は一瞬の隙をついて反撃に出た。


 しかし、ガレッドと六光の騎士たちはすぐに対応し、再び二人を包囲する形に戻った。戦況は激しさを増し、誰もが息を呑んで見守る中、ステラとリリカは最後の力を振り絞り、互いに笑みを交わした。

 

 一進一退の攻防が続く。


「行くわよ、リリカ!」


「ええ、ステラさん!」


 二人は必死の騎士団に対して心からこの戦いを楽しんでいた。


「ねえ?、リリカ?私、楽しくなってきちゃった!」


「ステラさん!私も!」 


 ステラとリリカの変化に会場がどよめきはじめる。


 二人は新たな決意を胸に、再びガレッドと六光の騎士たちに向かって突き進んだ。彼女たちの攻撃はさらに激しさを増し、練習場全体を震わせるような激しさを見せた。模擬戦の行方はまだ決まっていないが、二人の戦いぶりに誰もが心を奪われていた――。

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