第16話  王宮の夜⁉ 驚きの変身とアレクの願い!

 晩餐会が終わり、リリカとステラは王宮の広間で余韻に浸っていた。豪華な料理と王族たちとの交流は、二人にとって忘れられない経験となった。そんな中、王からの申し出があり、二人は驚きを隠せなかった。


「リリカ、ステラ。君たちにはしばらく王宮に滞在して欲しいのだ。明日の舞踏会にもぜひ参加して、君たちの華麗な舞を披露してほしい。」


王の要望に、リリカとステラは少し戸惑ったが、王の期待に応えたいという気持ちが勝り、二人は頷いた。


「分かりました。私たちで良ければ、喜んで参加させていただきます。」


「ありがとうございます、王様。精一杯頑張ります。」


 王の顔に笑みが浮かび、リリカとステラに感謝の言葉を述べた。こうして二人は王宮に滞在することが決まり、翌日の舞踏会に向けて準備を進めることになった。


 その夜、リリカとステラは少し気分転換をしようと、王宮の庭園を散歩することにした。月明かりに照らされた庭園は昼間とはまた違った美しさを見せ、静かな夜の空気が二人を包んでいた

 

「ステラ、この庭園、本当に素敵だね。夜になると全然違う感じがする。」


 リリカは感嘆の声を上げながら、庭園の花々を眺めた。すると、その視線の先に、珍しいホタルが舞っているのが見えた。その光はまるで星のように瞬き、リリカとステラの周りを幻想的に彩っていた。


「ホタル…こんなにたくさんいるなんて、まるで夢みたい。」


 さらに、夜にだけ飛ぶという珍しい蝶が姿を現し、その美しい羽を広げて二人の周りを舞った。


「リリカ、見て!あの蝶、とても綺麗…夜にだけ飛ぶなんて、本当に特別なんだね。」


 リリカが驚いていると、さらに幻想的な光景が広がった。彼らの羽は月明かりを反射し、虹色に輝きながら二人の周りを優雅に飛び回った。


「ステラ、見て!あの蝶…まるで宝石のように光っている。」


 ステラもまた、その幻想的な光景に心を奪われた。リリカとステラは夢中でそのホタルと蝶の舞を見つめていたが、そこへ突然、アレクシス王子が現れた。彼は二人の様子を見て微笑みながら、声をかけた。


「リリカさん、ステラさん、こんなところにいたんですね。探していましたよ。」


「ところで何を見ているんですか?」


 二人はアレクシス王子の登場に少し驚きながらも、彼に向かって微笑み返した。


「アレクシス王子、見てください!こんなに綺麗なホタルと蝶が…」


 アレクシス王子はその光景を見て優しく頷き、二人に近づいた。


「これは『ルクスホタル』と『ルーナ蝶』と呼ばれているんです。どちらも魔物の影響で数が減ってしまった希少種で、今は王宮で保護されているんです。」


 リリカとステラはその言葉に驚きながら、さらにホタルと蝶を見つめた。


「素敵な名前。こんなに美しいのに、魔物のせいで危険にさらされているなんて…。」


 ステラは悲しそうに呟き、リリカも同じ気持ちでアレクに問いかけた。


「私たちにできることがあれば、何でも協力します。アレクシス王子、私たちにも協力させてください。」


 アレクはリリカとステラの申し出に感謝の笑みを浮かべ、深く頷いた。


「ありがとう、リリカさん、ステラさん。君たちの力があれば、きっと彼らを守ることができるでしょう。これからもよろしくお願いします。。」


 アレクシスは少し照れくさそうに笑いながら、二人の横に座った。


「実は、お願いがあって来たんです。でも、せっかくのこんな夜に堅苦しい話はしたくないな。だから、良ければ僕のことは『アレク』と呼んでくれませんか?」


 リリカとステラはアレクシスの提案に少し戸惑ったが、彼の親しみやすい笑顔に心を動かされ、頷いた。


「わかりました、アレクさん。そう呼ばせてもらいますね。」


「ええ、アレクでいいんですか?それなら、私もそう呼ばせてもらいます。」


 アレクは嬉しそうに頷き、次のお願いを切り出そうとしたが、少し頬を赤らめながら視線を落とした。まるで好きな子に告白するような緊張した表情を見せた。


「実は…個人的なお願いで恐縮ですが。僕、実は大の猫好きで、リリカさんとステラさんの猫耳にすごく憧れていて…その、もし失礼でなければ、猫耳を触らせてもらえないでしょうか…?」


その真剣なお願いに、ステラは思わず顔を手で隠し、真っ赤になってしまった。


「えっ…耳を…触られるなんて…私、初めてで…恥ずかしすぎます…」


 ステラは視線を合わせることもできず、完全に照れてしまった。しかし、リリカは即答でアレクに応えた。


「もちろんいいよ、アレクさん!どうぞ触ってみて!」


 アレクは感謝の笑みを浮かべ、リリカの猫耳にそっと手を伸ばした。柔らかな耳を優しく触れた瞬間、リリカの耳は微かに震え、ステラの耳も同様に動いた。


「ふふ、くすぐったいかも。でも、なんだか不思議な感じ。」


 ステラはまだ顔を赤らめながらも、アレクが耳に触れることを許した。アレクは二人の耳をそっと撫で、ふと目を細めて何かを感じ取ったような表情を浮かべた。


 しばらく耳を触られていた二人だったが、突如、二人の身体が淡い光に包まれ始めた。リリカとステラはその光に驚き、アレクもまた驚きの声を上げた。


「これは…何が起こっているんだ!?」


 光は次第に強くなり、リリカとステラの姿をすっかり包み込んでしまった。二人はお互いの姿を見つめ合い、何が起こっているのか理解できないまま、次第に光に導かれるように変身していった。


「ステラさん、何だか変な感じ…これって、私たちの魔法の力が…?」


「リリカ、私も同じ…でも、こんなことは初めてで…。」


 光の中で、リリカとステラの衣装は一変し、より華麗で魔法使いらしい姿に変わっていった。リリカの衣装は鮮やかな光の刺繍が施され、ステラの衣装には水の波紋のような模様が輝いていた。


アレクはその光景を呆然と見守りながら、二人が魔法の力によって変身していく様子に目を見張った。


「リリカさん、ステラさん…君たち、一体どうなっているんだ?」


 光が静かに収まり、リリカとステラは新たな姿で立っていた。二人はその変化に戸惑いながらも、自分たちの姿に驚きを隠せなかった。


「これ…私たち、何かすごいことになっちゃってる…?」


「リリカ、もしかして、これが私たちの新しい力なのかな…?」


 アレクはその場でしばらく二人を見つめていたが、光がぼんやりと消え二人も元の姿に戻ってしまった。そして考え込みながら口を開いた。

 

「二人が伝説の光魔法使いとは聞いたけど・・・・・・。」


「もしかすると…猫耳を刺激されたことで、魔力が高まったのかもしれませんね。僕も驚きましたが、君たちがさらに強くなるための何かが起きたのかもしれません。」


 リリカとステラはアレクの推察に頷き合い、魔法の力が高まるきっかけとなった猫耳の存在に感謝しながら、今後どう活かしていくかを考え始めた。


「これからも、アレクさんと一緒にいろいろ試して、私たちの力をもっと開拓していきましょう!」


「そうだね、リリカ。新しい力を使いこなして、もっと成長していこう。」


 アレクは二人の言葉に微笑み、深く頷いた。


「僕もできる限り協力します。これからも三人で、力を合わせていきましょう。」


夜の庭園は、まだ静かに光を放ち続けていた。リリカとステラ、そしてアレクの新たな挑戦が、ここからはじまる――。

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