第34話 布石

伊予全域が毛利勢の支配下に入った頃、秀吉はその報告を受けていた。彼は紀州征伐の成功を収めたばかりであったが、次なる戦略として四国平定を見据えていた。四国攻略にあたって、彼が最も信頼を寄せていた武将の一人が藤堂高虎であった。


秀吉は高虎を呼び寄せ、伊予での戦の詳細を伝えた。毛利の進軍による四国東部の制圧は進んでいたが、完全に四国を支配下に置くためにはまだ多くの課題が残っていた。


**秀吉**: 「高虎、毛利勢が伊予を制圧したとの報告が入った。隆景は見事に事を成したが、四国全土を手中に収めるにはまだ時間がかかる。お前の力をまた頼りにせねばならん。四国の南、土佐の長宗我部元親が降伏したが、彼らの勢力はまだ油断できん。次は四国全土を統一するための一手を打つぞ」


高虎は秀吉の言葉に深く頷いた。彼はすでに四国における長宗我部氏の動きを熟知しており、次なる戦のための策を思案していた。


**藤堂高虎**: 「確かに、長宗我部元親は降伏したといえども、彼の勢力は依然として土佐を中心に根強く残っております。もし四国全土を安定させるならば、彼らを完全に服従させる必要がございます。私が思うに、まずは彼らの残党勢力を分断し、主要な城を一つ一つ確実に攻略するのが良策かと」


高虎の冷静な分析は、秀吉にとって非常に頼もしかった。秀吉は彼の知略に深い信頼を寄せ、次なる指示を与えた。


**秀吉**: 「高虎、お前の策は実に的を射ておる。では、毛利勢と協力しつつ、長宗我部残党を追い詰める作戦を進めよ。毛利の隆景にも援軍を要請し、四国平定に向けて動き出すのだ」


高虎はすぐに準備を整え、伊予へと向かうこととなった。毛利の隆景が伊予を制圧した後も、一部の城や拠点には反抗する長宗我部の残党が残っていた。その中でも、土佐勢が支配する小さな城塞や海上の補給路が依然として機能しており、完全な支配には至っていなかった。


### 四国での戦略

高虎は毛利勢と連携し、まずは残る長宗我部勢の拠点を一つずつ攻略することを決めた。彼はそのために、川や山道を利用した奇襲を計画し、敵の油断をつく戦術を展開することを提案した。


**藤堂高虎**: 「敵は防御が固いものの、山と川を利用すれば奇襲は可能。特に夜間の海上からの襲撃を行い、補給路を断つことが有効です。そうすれば、敵はじわじわと兵糧不足に陥るでしょう」


毛利の隆景もその策に同意し、高虎と共に四国平定へと動き始めた。彼らは四国南部の要所である土佐に向け、少数の精鋭部隊を派遣し、長宗我部の勢力を分断するための奇襲を実行に移した。


### 土佐の包囲と奇襲

高虎の率いる部隊は、夜陰に紛れて小舟を使い、土佐の海岸沿いを進んだ。長宗我部勢は、かつての敗北の影響で士気が低下していたが、依然として地元の支持を受けており、反抗する意志を捨てていなかった。しかし、高虎の緻密な奇襲作戦は見事に成功し、敵の海上補給路を断ち切った。


これにより、長宗我部残党はじわじわと疲弊し、守りを固めていた城塞も次々に陥落していった。高虎は敵を完全に包囲する前に降伏を勧告し、抵抗を減らすための策を講じた。


**藤堂高虎**: 「抵抗すれば全てを失う。降伏すれば命は助けよう。土佐を捨て、秀吉様に忠誠を誓えば、再起の道もある」


その説得が功を奏し、ついに長宗我部の残党は次々と降伏を決意。高虎の知略と勇気により、四国は完全に秀吉の手中に収められた。


### 天下統一への布石

四国平定が成し遂げられた後、秀吉は高虎にさらなる領地を与え、感謝の意を示した。高虎の功績は、秀吉の天下統一への道を大きく切り開くものとなり、彼は今後の戦いでも重要な役割を果たすことが期待される存在となった。


**秀吉**: 「高虎、四国を見事に制圧した。お前の知略なくしてこの勝利はなかったであろう。さあ、次は九州じゃ。共に天下統一の夢を果たすため、さらなる戦に備えよう」


こうして、藤堂高虎は次なる戦いへと備え、秀吉と共に新たな地平を目指して歩みを進めていった。

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