第67話

 シアに触れてもいいか?と尋ねたら……あれは断られた?断られたのか!?


 手を繋ぐことすらだめかー……三人で手を繋いでいた時、シアの手も繋ぎたいと思ったんだが。シアなら大丈夫な気がしたんだけどな。他の女性と接するときとは明らかに自分の気持ちが違う。


 ……というか、それは建前だ。アレルギーが出てもいいから触れたかったんだ。


 がっくりとうなだれる。


「失礼します。旦那様、具合はいかがです……?どうしましたか?」


 シリルになんでもないさと答えて、頭を切り替える。


「陛下がフランを狙っている気がする。表向きはオースティンだが、裏にいそうで嫌な予感がする。王宮内はどうなってる?」


「そうですね……。調べてみたところ、オースティン殿下とイザベラ様は最近喧嘩が多いようで、その原因は世継ぎができないということらしいです。オースティン殿下は今さら『フランを手元においておけば良かった』などと周りに言っているそうです」


「……絶対に譲るかっ!フランとシアの警護を強化しておこう」


「ほんとに厚かましい殿下で……おっと失礼しました。フラン様とシア様の警護を増やしましょう」


 頼むぞとオレは指示を出しておく。後は陛下だな。この事件に陛下は関わっているのだろうか?


「陛下のことはまだわかりません」


「そうか引き続き調べてくれ」


 かしこまりました。と一礼する。


 これでしばらくは大丈夫だとオレは手配したことで満足していた。


 だが、オースティンとイザベラは力尽くの行動に出たのだった。オレがシアとフランの護衛を増やしたからと安心していた3日後のことだった。


「旦那様!大変です。王家の一部隊が公爵領にやってきているようです!!」

 

「部隊!?どういうことだ!?反逆したつもりはないんだが?」


 何かしでかしたか?身に覚えがないし、そういう立ち振舞もしていないし、裏で王家がオレに対して恨みや反感を持ってるという話すらない。


「冗談いっている場合ではないですよ」


 シリルがそうオレに言う。いや、本気だけど。


「どの部隊だろう」


「第三部隊のようです」


「オースティン直属の部隊か……あいつバカか?軍を動かし、人の領地へ踏み込む意味わかってるのか?」


 バカ王子が一緒にいるのかわかった。狙いもわかる。オレではない。求めているのは……。


「シア様とフラン様が街へ行っているんです」


 なんだって!?オレは立ち上がった。


「すぐに公爵家の精鋭部隊を連れて、オレたちもいくぞ!」


「すでに馬はいつでも出せる状態です」


 できる男シリルだった。オレは動きやすい服に着替え、バッと馬に乗った。


「ヴォルフとジャネットは?」


「同行しています」


 それならば時間を稼げるだろう。あの二人は強い。表向きは家庭教師とメイドだが、中身はかなり強い。


「シリル、おまえはここにいろ。陛下に連絡をとっておいてくれ。王家の兵が動いているがどういうことだと伝えてくれ」


「かしこまりました」


 呼び出された公爵家の精鋭部隊がすぐに集結する。


「遅れをとるな!」


 馬が駆ける音を響かせて、シアとフランのもとへ急ぐ。間に合ってくれ!!そう願う。


オースティンが必要なのはフランだろう。シアの身が危ない!馬を駆けさせながら最悪の事態を予想してぞっとするのだった。

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