第3話 いきなりダークエルフ
相変わらず視界は真っ白、何も聞こえない、何も感じない……それでどれくらい時間が経ったかわからないが、何となく感覚が戻ってきた。視界は相変わらずだったが重力を感じる。それと同時に何か乗り物酔いでもしたみたいにグラグラするような感覚に襲われ始めた。それが次第に大きくなってきてやけに気持ち悪い。ひょっとしてやっぱり元の世界に戻されていて、今空中を落下中なんだろうか?
何となく、聴覚が戻ってきたようだ。ザーザーと、何かが流れるような耳障りな音が聞こえはじめる。それが耳鳴りだと気づいたのは、忌々しい声が聞こえて来たからだ。
「な、なんスかコレ!?
女!?
女だ!
女だけど……銀髪で……肌が茶色っスよ!
黒ギャルっスか!?」
「惜しいな、せっかくファンタジー世界に来たんだぜ?
そんなありきたりなモンなわけないだろ。
よく見ろ!」
沢村邦夫のけたたましい声とアホ専務こと村上一茂の下品な声……コイツらまだ居たのか。いや、居なくなるわけないか……コイツらの声ってことは俺は元の世界に戻されたってわけじゃないらしいな。少なくとも三十メートルの崖下へ転落死ってパターンは回避できそうだ。
「あ、耳が!?
エルフっすか!?
ダークエルフだ!!」
何、ダークエルフ!?
ファンタジー作品おなじみのダークエルフが居るのか?
見たい、見てみたいぞ……ああ、でも目が明かない。
目は開いてるはずだけど視界がまだ真っ白で……
ああ、頭がグラグラして気持ち悪い……吐きそう……
何か、口の中に石みたいな何かが……ウエッ……ベッ……
「いいぞ、望んだ通り俺好みのスタイルだ。
どうだ、エッロいだろぅ?」
「おお~エロいっス!
脱がしてみてぇ~!!!
でもダークエルフなんかどうすんスか!?」
「決まってんだろ?
ヤルんだよ!
犯しまくってアヘアヘ言わせてやる」
何言ってんだこのアホ専務!?
もうモラハラ、パワハラどころじゃねぇぞ、フツーに犯罪だ!
「う、うぁあ!?」
ようやく視界が戻って来たと思ったが目を見開いても視界がボンヤリしている。それどころか目を開けた途端に目の奥がギューッと痛くなって世界がグラァっと揺れるような気持ち悪さに見舞われ、俺は思わず眼鏡をはずした。
あ、あれ?
眼鏡をはずした方が良く見える?!
「マ、マジすか!?」
「コイツはなぁ、チ〇ポが大好きなド淫乱なんだ。
超ビンカンで快感に逆らえないし、犯されて中出しされると、ソイツのことを好きになっちまって、ソイツのチ〇ポ無しじゃ生きてけなくなるのさ。
チ〇ポ欲しさに何でも言うことを聞く性奴隷って奴だ!」
俺が回復してきた感覚を確かめて居る間にも、聞くに
だが視力の回復した俺の目が捕えたアホ専務は何故か腕組みして俺の方を見て笑っていやがる。
チッ、ダークエルフに注意を向けてる隙に奇襲してやろうと思ったのに……ダークエルフはどこだ?
俺はアホ専務と邦男の方を警戒しながらゆっくりと周囲を見回すが、それらしき人影は見つからなかった。
「それにしても専務、何だってコイツをダークエルフに?
どうせならもっとマシな女がいたでしょ!?」
「お、俺だってホントは
でも身体が女ならどのみち一緒だろ?
女が一人増えたと思や、却って得したってもんだ」
玲子って総務の新人の!? コイツ、会社の親睦会ツアーに会社とは無関係な愛人連れて来ちまってる癖に会社の女の子まで狙ってたのか!
「ま、まあそうかもしれませんけど……」
「ヤレばアヘって従順になるんだ。
だったら、生意気で反抗的な奴を屈服させた方が面白いだろ!
くやしいっ、でも感じちゃうみたいなさ?」
何言ってんだコイツ、ホントに人を人と思って無いんだな。
普段のパワハラ、モラハラも素でやってやがったのか!?
ともかく俺は全快したとは言い難い身体に鞭打って身構えた。どのみちコイツらとはこのまま穏やかにハイサヨナラってわけにはいかない。せめて一発ブン殴ってや……あ、あれ!? 手、手が細い……これオレの手!?
目に映るオレの手は見た事も無い他人の手だった。やけにほっそりしていて女の手みたいだ……おまけに肌が茶色い? 自分の手とは似ても似つかないけど、手を動かすとその細い女の手も同じように動く……
そう言えば様子が変だ!
ズボンが、尻まわりがやたら
「お、ようやく気付いたみたいだぞ?」
「黒田さ~ん、大丈夫ッスかぁ~!?」
シャツの上からあるはずのない胸のふくらみを掴むと、やけにダイレクトな感触があった。これは、この痛みは……詰め物なんかじゃない! まさか、本物のオッパイ!?
オレが唖然として動きを止めると、二人は急にゲラゲラと笑い始めた。顔をあげて見ると、こっちを指差してる。
「まさか……!?」
出した声が違う!
オレの声じゃない、女の声だ!
「え、コレ、俺の声!?」
手を顔に当てる……違う、オレの顔と触った感じが……顔の形が違う!?
何度も手を当て直して確認するが、やっぱり違う。
そして両手を耳に当て、オレは確信した。
「耳が……長い!?」
気付けばオレは、女のダークエルフになっていた。
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