第六話 初仕事

「ごめん。1人で花子さんのところに行っちゃって」

 そう言って渚は頭を下げた。

「頭を上げて!渚が、退院したら二人で花子さんを倒しにいこう!と言いたいところなんだけど」

「え?」

「倒しちゃった」

「え?冗談?」

「いやいや冗談言ってる場合じゃないだろ!」

「あの化け物を?」

「そう!あの化け物を」

「どうしたらあんな化け物普通の人が倒せるのよ!?」

「はじめてあった時さ、渚に暴力を振るおうとしていたやついたじゃん?」

「うん。いたね」

「あの人とその取り巻きを僕は一瞬で倒したでしょ?」

「そうだね?なんか自慢げなのが納得いかないけれど」

「自慢げじゃないよ?」

「いや自慢げでしょ」

「ってこんな話はおいといて!」

「あれ?なんの話してたっけ?」

「花子さんを倒した話!」

「そうだった!」

「話の続きなんだけれど」

「うん」

「本気で殴ったら花子さんの頭を貫通しちゃった」

 薬とSoulさんの話はしたらまずいのでざっくりと話した。

「秋人くんに、絶対に喧嘩を売らないようにしよう」

「友達はやめないでね?」

 たった1人の友達を失いたくなかった。

「わかってるよ」

「良かった」

「素手で戦って、秋人くんに勝てる人なんていないんじゃないの?」

「そうだね」

「なにニヤけてるの?」

「え?」

 自分の口元を触れてようやく自分がニヤけてることに気がついた。

「いや〜自分の強さにびっくりした。的な?」

「なに?自分に惚れてるの?それはやめた方がいいと思うよ」

「惚れてるとは言ってない!」

 でも僕には薬の力もあるから本当に素手で戦って、僕に勝てる人なんていないだろう。花子さんの顔面を貫通するほどのパワーはある。これを受け止められる人がいるとは思えない。

「じゃあまた来るよ」

「ん。今日はわざわざ来てくれてありがとう。そして花子さんの事もありがとう」

「うん」


「そういえば花子さん以外の《mirra》がどこにいるか分からないな。どうしたら分かるんだ?」

『それはですね西野 秋人さん。左手を見てみてください』

「左手?」

 何かと思い、左手を見てみた。

 !?

 思わず目を見張った。手のひらが、地図になっていたからだ。所々赤い点がある。おそらくここに《mirra》がいるのだろう。

「この赤い点が《mirra》か?」

『そうです』

「分かった。時間がある時に倒しておくよ」

『ありがとうございます』

『ちなみに私は忙しいのでもうテレパシーは出来ません』

「分かった」

『安心してくださいね。テレパシーを辞めたら声を勝手に聞かれたりということはありませんので。渚さんの前で随分と、カッコをつけていましたね』

「聞かなかったことにしてくれ」

『考えておきます』


 僕は今ベットに寝転がり天井を眺めていた。今日は花子さんを倒した翌日の土曜日。いつもなら土曜日は本屋に行っている。けれど僕には《mirra》を倒すというSoulさんからの『頼み』がある。だから、今日家の近くにいる《mirra》を倒しに行こうかな?

 左手を確認してみたところ、家から10kmほど離れたところに赤い点があった。

「10kmか、確かこの《mirra》がいる場所の近くにここら辺でも飛び抜けて大きい本屋があったはず。よし、行くか。初仕事だ!!」

 行くと決まれば一瞬だ。他のイケメン共のように髪をセットする時間は僕には必要ないから、服を着替え歯を磨き、顔を洗えば準備オーケーって訳だ。


 目的地まで電車で行く。近くの本屋なら歩きだけど10kmは疲れる。最寄り駅から電車に乗り、10駅ほどすぎた所で僕は電車をおりた。


 家の周りも結構発展してるけれどここはもっと発展してるな。見渡す限り高いビルがある。

 本屋よりも《mirra》の方が近いから先に倒すことにした。それに買った本を台無しにされたくないしな。

 この辺のはず。

「はっ!」

 何か頭に入ってくる。誰だこの人、髭長っ!突如頭に知らないおじさんの顔が流れ込んできた。もしかしたらこの人が《mirra》なのか!

 一応当たりを見渡してみた。が、このおじさんはいなかった。僕は薬を飲んでから、一瞬見るだけでそこにいる全ての人を見分けることが出来るようになったのだ。

「あ、あいつは!」

 頭に流れ込んできたおじさんが道の反対側にいた。タバコを吸いながら歩いている。あいつが悪いやつかはまだ分からないな。

 近づけば匂いでわかるはず!けれど人前で殺すのはまずいから路地裏に連れて行ってから殺すしかないか

 僕は、おじさんを見失わないようにしっかり見ながら、横断歩道を渡った。

 僕とおじさんの距離が10メートルを切ったその時、

 おじさんは、僕と目が合うと一目散に路地裏の方に入っていった。

「自分から人目のつかないところに入っていくなんて、好都合だな!」

 僕は、逃げ切られないように人目につかないところに入ったら、足に力を込めて本気で走った。おそらくこの速度で走ることが出来る人は、この世界にいないだろう。

 路地裏に入って10秒ほどでおじさんを見つけた。

「見つけた!」

「クソッ」

 僕は、拳に毒を纏わせるイメージを持った。すると僕の拳を毒が纏った。

 僕は、おじさんの背中に狙いを定めた。

「食らえ!ポイズン衝撃ショック!!」

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