第五話 してもらいたいこと。

「してもらいたいことってなんだ?」

「西野 秋人さん。あなたが死ぬ前に戦っていた、花子さんを含めた人類に被害を与えるヤツらのことを《mirra《ミイラ》》と呼ぶの。あなたには、その《mirra》を倒して欲しい」

「花子さんでさえ倒すことが出来なかったのに僕にそんなことが出来るのか?」

「その事なんだけど、《mirra》は人の形をしているだけの欲望の化け物なの。そんな化け物に普通の人は絶対に勝てない。だからあなたに《mirra》を倒すための特別な道具を渡すわ。生き返った時に左手の中にあるから」

「左手の中だな。分かった」

「最後にお姉さん。あなたの名前を教えてくれませんか?」

「私の名前は、Soul《ソウル》よ」

「教えてくれてありがとう!」

「それじゃ、生き返らせるわよ」

「よろしくお願いします!」


「"神"よ、この者に生き返る力を与え給え」

 Soulさんが呪文らしきものを唱えると地面から僕を囲うようにして金色のつたのようなものが生えてきた。

生命蘇生ライフリカバリー!!」

 Soulさんの叫び声と同時に金色の蔦が僕の体に巻きついた。蔦から体中に力が湧いてきた。


「ハッ、」

 目を開くとさっきまで花子さんと戦っていたトイレに座り込んでいた。

 周りを見渡したところ、花子さんの姿は見当たらなかった。

 そういえば左手の中に《mirra》を倒す特別な道具があるはず。

 左手の中を見てみるとそこにあったのは『飲み込んで。』と書かれた付箋と1錠の薬だった。

「これ大丈夫か?」

 けれど迷っている暇はない。なぜならいつ花子さんが出てきてもおかしくないからだ。

 ゴクッ僕はこの薬を飲み込んだ。

 !?

 さっきまで暗かったトイレが昼間の外と同じくらいの明るさで見える。すごく離れた教室での話し声がはっきり聞こえる。トイレの匂いが薬を飲む前よりもマシになっている。この薬を飲んでから五感が活性化している気がする。

 カサッ、ススッ、、

 服の擦れる音がした。まさか!と思い天井を見てみると、そこには花子さんがいた。

「おかしイな〜?殺しタはずなノに、なンで生きているのカな?もう一度殺しテア、ゲ、ル、、、」

 突如花子さんの目が赤く光った。ということは僕が1度死んだ前と同じぐらいの力があるはずだ。注意しないといけないな。

 薬を飲んでから筋力も、上がっているような感覚がある。試しに花子さんを思いっきり殴った。

 ゴキッ、バキバキッ

 花子さんの腹を貫通してしまった。

 やばい、なんて力だ。絶対に本気で人を殴らないようにしよう。

「グオォォ、イタイ ユルサナイ コロス」

 花子さんは拳を振り上げ思いっきり僕を殴ろうとするが僕は簡単に止めてしまった。

「そういえば、僕は《mirra》を倒せと言われたけれど殺さないといけないのか?さすがにそれは可哀想なんだが。」

『西野 秋人さん。安心してください。《mirra》は、1度死んだ人の体を無理やり生き返らせたようなものです。人類の掟を破っている人なので殺してしまってください』

 言ってること怖っ!Soulさんはとても綺麗な人だからそんな残酷な言葉は似合わないな〜

 そんなことを考えていたら僕の拳で貫通したはずの花子さんの腹は再生して傷一つ残らない形となってしまった。

 本当に人類の掟を破ってやがる。

「でも、再生するのにどうやって倒したらいいんだ!?」

『あなたが飲んだ薬には《mirra》の再生能力を破壊する毒を体から分泌させることができる力も備わっているの。その毒を花子さんの体内に入れることが出来れば花子さんは間違いなく消滅するわ』

「分かった」

 毒を体から分泌させるにはどうしたらいいんだ?念じてみたら出るかな?毒、出てこい〜!

 すると、右手の甲から黒っぽい粘着力の高い液体が出てきた。

「うわ!できた」

 きっとこれを花子さんの体にぶち込めば花子さんに襲われておかしくなった人は治るはずだ。僕の中学校生活初めての友達の渚の顔が頭を横切った。

「僕の大事な友達を元に戻せェ!」

ポイズン衝撃ショック!!」

 僕の拳は花子さんの頭を貫通した。

「うわっ、」

 花子さんの頭は貫通した所から塵となって消えていった。

 それと同時に昼休み終了を、告げるチャイムがなった。

「やべっ、次の授業まであと5分しかないじゃん」

 幸いにも移動教室ではなかったので授業に間に合った。


 放課後


 僕は花子さんを倒したから渚の意識が戻ったと思い、病院に来ていた。

「あの〜、この病院に入院している冬野 渚の病室を教えてくれませんか?」

「昨日も来ていた方ですね。先程家族以外の見舞いが出来るようになりました。良かったですね」

 そう言って、受付の人はニコッと微笑んだ。

「部屋の番号は、703です」

「ありがとうございます」


「701、、702、、703、!あった」

 エレベーターから降りてすぐ近くにあったので直ぐに見つけることが出来た。

 僕は、部屋のドアを強く握った。

 ガラガラガラ、

「秋人くん?」

「渚、」

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