第2話

 「あ、あの大丈夫ですか。俺でよかったら話お聞きしますよ」

 俺が声をかけると彼女は涙を拭い俺を睨みつけて言った。

 「ナンパなら他の人にやってくれる。今そうゆう気分じゃないの」

 「あ、いや、ナンパとかではなくて。あなたが寂しそうにしていたので何かあったのかなぁと思って」

 俺は慌てて誤解を解こうとした。俺の慌て具合を見て、本音だとわかってくれたのか彼女は少し表情を緩めた。

 「その反応だと本当みたいだね。寂しそうか、他人に言うようなことではないけど少しだけ話を聞いてくれる?」

 彼女は酒を一口だけ飲んで、再び寂しそうな表情をして話し始めた。その寂しそうな表情は荒れた大地に咲く一輪の花のようだった。

 「彼氏がいたんだけどさ、今日急に別れたいって言われて。理由を聞いても怒ったように自分で考えたらって言われて。でも、彼のこともちゃんと愛してたのに。私ってそんなに魅力がないかなって思って」

 彼女の声は言葉を話すたびに震えてきた。話している時にふと出た涙は、雨のように次第に増えていき、話終わる頃にはカウンターを少しだけ濡らしていた。俺は恋愛経験などないから的確なアドバイスも慰め方も知らない。だからこそ俺は彼女に対して思っていることを語った

 「あなたには十分魅力がありますよ。見た目はとても美しいですし、声はとても綺麗ですし、話しているかんじとても優しい人だと思いますし、今お酒を飲んでいる姿もその、えっと…」

 声を張り上げて語っていたが急に変なことを口走ってしまいそうになる瞬間、顔から火が出そうになるほど熱くなった。そんな俺を見た彼女の顔には笑みが溢れていた。

 「君って面白いね。悲しかったことも少しマシになったよ。」

 俺は恥ずかしさと彼女の眩しすぎる笑顔のせいで彼女の顔を直視できなかった。

 「というか、ナンパじゃないって言ったわりには私のこと結構意識しちゃってるんだね」

 彼女は俺を揶揄うように意地悪な笑みを浮かべた。俺はさらに恥ずかしくなり顔手で覆ってしまった。指の隙間から見える彼女の笑顔は、第一印象の寂しさは消えていて今は太陽のように明るかった。恥ずかしさと彼女の可愛らしさに完全に体温が上がってしまった俺は目の前にあるグラスを一瞬で空にするのだった。

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黎明と煙 古野トウカ @Nopuru007

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