閻魔様の憂鬱

 閻魔様は飽き飽きしていた。毎日毎日やってくる死者の言い分を聞き、地獄行きか天国行きかを決め続ける日々。しかも、近頃は異常気象やら紛争やらが地球で起きまくっているせいで、死者の数も多く、残業をしなければならぬ日が続いていた。


「ああ、今日も仕事か」


 その日も、これから始まる単調な仕事に閻魔は嘆いていた。しかし、その日はイレギュラーから始まった。業務を開始してすぐ、配下の鬼が慌てた様子でやってきたのである。その鬼は腕を振り回しながら言った。


「大変です閻魔様。今朝地球に隕石が衝突し、人類が滅亡したそうであります!」


 閻魔は嬉しくなった。それならもう今後は人間を裁かなくて済むじゃないか、と。しかし、彼はすぐに頭を抱えた。


 遠くに見える三途の川。その川を、夥しい数の死者が渡ってきていたからである。

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