最強の三姉妹

「なんて悍ましい姿・・・」


「お母様、本当にあの者も側近になるのですか?」


「当然です。・・・それにあれは面白い人だ。」


 太が去って、暫くしてホロの付き添いとして側に付き添っていた娘の一人であるプリエが口を開いた。

 太の姿を思い出して嫌悪感を顕にさせて口を押さえていた。

 それに便乗して妹であるサワカが自分の母であるホロを心配そうに尋ねた。尊敬と羨望を皆から寄せられるホロの主人があんな化け物で良い筈がないと娘子孫全員が思い、反対していたのである。

 そんな事を気にする様子のないホロは娘達の言葉を受け流しつつ、太の領地や能力の情報は既に手に入れているので、円滑な領地経営が出来るように既に頭の中で計画を組み立て、すぐにでも太にプレゼン出来るように整えていた。


「私は嫌です!あの者の眷属になろうだなんて!!」


「・・・・・・安心なさい。貴方達は連れて行きません。」


「「え?」」


 ホロに従者を二人連れて行けるものがあった。

 これは自分のレアリティより下の者なら誰もの大丈夫な為、娘の中でも特に優秀なこの二人を連れて行こうと思い、太の面接に付き添いさせていた。

 だから、二人を連れて行かないというホロの発言は二人にとって衝撃な事だった。


「な、何故ですか?!自分で言うのもなんですが!私達はお母様の子供、子孫でも特に優秀です!私達以外でお母様の従者を務まる人達はいません!!」


 側近として召喚されるホロに従者として付き添えるというのはホロの子孫だけじゃなく、戦乙女達からも凄く名誉な事だった。

 それなのに、いきなりの取り消しに納得が行かないプリエは声を荒げて言った。


「答えは簡単です。太様が貴方達を不合格にしたからです。」


「は?・・・あの者は何も言ってませんでした。」


「そうです!あの者はお母様の身体を舐めるように見て、合格と言っただけです!!」


「はぁ・・・だから、貴方達はだめなのです。」


 娘達の反論に呆れながらホロは答えた。

 確かに太は何も言っていない。

 生前からよく向けられ続けた気色悪い視線も向けてもいたが、その真意に気づかずにそのまま嫌悪している時点で不合格なのだ。


「良いですか?これは・・・貴方達だけではなく、他の者達にも言える事ですが、相手の真意を見抜けない間抜けにはなってはいけません。太様のあの目線は演技・・・いえ、攻撃ですね。」


「攻撃・・・?」


「えぇ、あれは攻撃。・・・私達の精神を削る攻撃です。」


 太が面接時に見せた視線、動き、表情、全てが三人の精神を蝕み、SAN値を削るものだった。 それを直視しても大丈夫な精神かどうかを測るのが今回の面接だった。

 能力が優秀でも精神が弱く、脆く、耐える事すら出来ない弱者は邪魔でしかないため、視線はそれを確かめる手段だった

 それに気がつき、耐えるどころか笑みを浮かべ、削られている精神に動揺する事なく冷静に受け答えしたホロは合格判定であり、それに気が付かないどころか、精神が削られていることにすら気が付かずに此方へ嫌悪感を隠さない姉妹は不合格なのである。


「太様の前世の姿は資料を見て知っています。あの醜い肉体とは違う普通の肉体でした。当然顔もです。・・・ですが、あの人はそれを扱えていた。私達の精神を確実に削る精度でです。太様にはいずれ名実、自他ともに私が仕えるのに相応しい王となるでしょう。」


 ベタ褒めのホロに対して姉妹はそんな器があの下劣な者にあるようには見えないどころか、自分達の精神を削っているなんて事実があるわけがないと思っていました。


「そんなわけありません!!あの生前で史上最高の賢王として知られていた王ですら、お母様を従えるには力不足としか言えませんでした!!!それがあんな下劣な者が超えるなんてあり得ません!!それに私達は!正常です!精神に異常なんて・・・」


「お、お姉様・・・わ、わ、わたし・・・」


「やっと気が付きましたか・・・そうです。いつものプリエならそんなに声を上げることなく、冷静に反論して意見してきたでしょう。・・・サワカはもっと精神を鍛えなさい。もう既に足腰立たなくなっているじゃないですか・・・」


 ここに来てやっと姉妹は自分達の異常に気がついた。

 プリエは自分が自然と余裕なく声を荒げていることに、サワカは自分が立っていられないくらい弱っている事に倒れ込んでやっと気がついたのである。

 そんな情けない娘達にため息をつきながら叱責したのである。


「・・・仕方ありません。妹達を連れて行きましょう。」


「ま、待ってください!あの方達はお母様と同じEXです!連れて行けません!!」


「そんな事は分かっている。・・・つまり、EXじゃなければ済む話だ。」


「そ、それは!!」


 ホロは生前からずっと一緒だった妹達を連れて行くのは新鮮味がなく、乗り気ではなかったが、子孫が不甲斐ないので仕方ないと思い、決心した。

 プリエはまとまらない思考をフル活用して反論したが、そんな問題はすでに解決済みだとホロは胸元から首輪を取り出してプリエに見せた。

 それはルールの抜け穴を通すグレーな代物だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る