殺人鬼の僕が異世界転生したら城焼きをお願いされたので頑張ります

惣山沙樹

殺人鬼の僕が異世界転生したら城焼きをお願いされたので頑張ります

「あれ……ここはどこ?」


 どこまでも白い空間。そこに僕は浮いていた。思い出せない。どうしてこんなところにいるんだっけ?


「瞬、あなたは死にました」


 目の前がぱあっと明るくなり、たゆんたゆんの巨乳を揺らした金髪の女性が現れた。


「えっ……死んだ? えっ、えっ」

「トラックに轢かれて死んだのです」


 トラック。定番である。何って異世界転生の。ということはこの女性は女神だ間違いない。


「わーい! じゃあ僕、異世界行けるの? チート能力ガンガン持って! 魔王だろうと何だろうと倒してくるよ! そんでハーレムね!」

「瞬……確かにあなたには能力を与えて転生させますが、それは魔王を倒すためではありません」

「へっ?」


 女神はこう説明した。


「前世で欲望のままに何人も絞殺して埋めたあなたにぴったりな世界があるのです。この世界は……ぶっちゃけ失敗作です。人間社会はめざましい発展を遂げましたが、争いが止まず、人間同士憎しみ合うことをやめません」

「まあそれって僕が住んでた世界もそうだったけどね」

「なので、瞬。あなたにはこの世界を滅ぼしてほしいのです。人間の作った九つの城を焼いてください。人間を一人残らず滅ぼして下さい」

「ふぅん……まあいいけど。で、見返りは? 見返りは何かあるの? せめて前払いで何かしてくれない?」

「ま、前払いですか?」

「よっこいしょ」

「キャー!」


 僕は女神とえっちなことをした。


「うっうっうっ……転生者に襲われたのは初めてです……」

「ふぅ……タバコ欲しいな。ないの?」


 女神が指パッチンするとピースとライターと灰皿が出てきたので一服した。


「こ、これで気が済んだでしょう、瞬。世界を滅ぼした暁には、どこでも好きな世界にさらに転生させましょう」

「おっけー! 頑張るね!」


 そして、僕は送られた世界で、究極火炎放射アルティメットバーニングボンバーの能力を活かして九つの城を焼いた。


「女神ぃー! 焼いたよ! 焼いた! いやぁよく焼けた! ご褒美ちょうだい! 巨乳のビキニのおねえさんしか存在しない常夏の世界に行きたいんだけど!」


 すると、また白い世界へ呼び寄せられた。


「瞬……さすがです。こんなに短期間で一つの世界を滅ぼしてしまうとは。あのぅ、その腕を見込んでもう一つ世界を滅ぼしてほしいのですが」

「ええー? 今度は何?」

「ちょっと設定をミスってしまって悪徳を重ねる程に社会的な階級が上がる世界になってしまったのです。こっちの管理も面倒になってきたのでぜひお願い……」

「わかったから前払い」

「キャー!」


 女神は今度はちょっと積極的だった。


「じゃあ行ってきます」

「い、行ってらっしゃい……」


 まずはどんな世界なんだろう、と旅人のフリをして暮らしてみたのだが、人殺しをすれば名誉になる確かに終わってる世界であり、試しに上流階級の貴族たちをぶっ殺してみたら有名になってしまったので、気に入ってしまってしばらく続けている。

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殺人鬼の僕が異世界転生したら城焼きをお願いされたので頑張ります 惣山沙樹 @saki-souyama

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