第15話 ランジェリーショップに行こう
次から次へとスイーツを食べたことにより、俺は糖分で脳をやられてしまった。
「あ……ちょっとやりすぎた?」
川名さんは苦笑いしながら俺の顔を覗き込む。
「だ、大丈夫? 神瀬くん……?」
「大丈夫、大丈夫……うん」
我に返ったのか、江東さんも申し訳なさそうにしていた。
「ぐひひっ、こんなに食べるとお腹周りが心配だねぇ……杏愛ちゃんもそう思わない?」
「えぇっ!? ど、どうして私に聞くんですかぁ……」
「はいはい。もうこの辺にしておきましょ」
芝崎さんがそう制止するが、この子も大概だった。
ドサクサに紛れて写真まで撮っていたのを俺は知っている。
何に使うつもりなんだろうか……。
結局、好き放題した詫びということで、代金はすべて彼女らが支払ってくれた。
食べたのは俺なんだから出させて欲しいと言ったが、懐事情が寂しいことを知っていることもあり、突っぱねられたのだった。
「ねぇねぇ、神瀬くんはこのあと予定あるの~?」
「うーん、特には……」
色々なことがあってすっかり頭から抜け落ちていたが、スーパーに惣菜を買いに来ていたんだった。
ただ今の糖分で満腹の状態では、何か食べたいものなんて浮かんでこないのだが。
「そっかそっか。じゃ、じゃあ……買い物に付き合ってよ。ぐひひっ」
「買い物って……ちょっと君江!? さっき話したこと忘れたの?」
確か芝崎さんは買い物へ行くと言っていた。
そのお目当ては下着だったのだ。
「いいじゃん。や、やっぱさ……男子の目線も気になるでしょ?」
「それは……」
芝崎さんは俺の顔をちらっと見て目を逸らす。
「神瀬くんはその……一緒に来るの嫌ですか……?」
コソコソと近づいてきた犬鳴さんが聞いてきた。
彼女も芝崎さんの意見に賛成し、下着を買いたいと言っていた気がする。
「お、俺はいいんだけど……みんながいいなら」
「わ、私は構いませんよ? 鏡子ちゃんは……どうですか?」
「ううっ……まぁ、そうね。嫌じゃなければ……ね」
みんながいる影響かはわからないが、やっぱり犬鳴さんは積極性が増した気がする。
「ふーん。面白そうだしボクも行こうかな」
「じゃ、じゃあ私も一緒に……」
川名さんと江東も賛成する。
「じゃあ決まり~っ! ぐひひっ、いざ行かん!」
夜凪さんは嬉しそうに目的方面を指で指す。
こうして俺は女子五人とランジェリーショップに行くことになったのだった。
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女性向けのお洒落な店が多く構える商業施設。
そこに目的のおそらく高級店であろうランジェリーショップがあった。
白を基調とした眩しいほどの清潔感が溢れる作りに、もう場違い感で足が動きづらくなる。
もちろん俺は生まれてから今まで、こういった店に入ったことがない。
女子と一緒に来るなんて誰が予想できただろうか。
男が来ると迷惑なんじゃないかと思ったが、幸いにも他の客の姿は見当たらない。
その点だけは安心できた。
「じゃあまずは鏡子ちゃんのから見てあげてね~、ひひっ」
「わ、私から?」
「言い出しっぺだかんね、どんまい」
「くっ……こ、こっち来てくれる?」
「お、オッケー!」
夜凪さんと川名さんの二人にそう言われ、俺は芝崎さんのあとをついて行く。
他の子はバラバラになって、各々の気になる商品を見ることになった。
俺は挙動不審にならないように心がけているつもりだが、つい目が泳いでしまう。
「こ、この辺りのどれか……かしらね」
並んでいたのは、かなり大きいサイズのブラジャーだった。
予想はできていたが、こうして見てみるとドキドキしてしまう。
商品の説明を見れば、フルカップと記載されていた。
大きな人向けということなのかと思っていると、芝崎さんの視線を感じる。
「……で、よさそうなのはあるかしら?」
「お、俺が選ぶの?」
「せっかく来てくれたわけだし……どうせなら」
デザインはシンプルなものから、セクシーなものまで色々ある。
ショーツとセットになっているが、こちらも同じような感じだ。
正直、セクシーなものは言いづらい。
俺が迷っているのを察したのか、芝崎さんは口を開く。
「わ、私としてはこれがいいと思うんだけど……」
そう言って手に取ったのは、この中でも抜群にセクシーな黒いもの。
ブラジャーのカップは俺の顔が包み込めそうなほどあり、何よりショーツが際どすぎる。
こういうのをTバックと呼ぶのだろうか。
俺は興奮やらなんやらで言葉を失う。
「ち、違うのよ? 普段はもっと地味なものなんだけど……た、たまにはこういうのもいいかなと思って……」
「い、いいと思うよ俺は! うん……に、似合いそうだし……」
「そうかしら……ありがとう」
顔をぐわーっと赤くした芝崎さんは、手に取った下着をジッと見た。
それを身につけることを想像しているんだろうか。
そして俺の視線に気づいて我に返る。
「私のはもう決まったから! 杏愛のところに行ってあげてちょうだい」
「犬鳴さんのところ? わ、わかった」
そう言われ、俺は次に犬鳴さんのいる場所に向かう。
ちらっと振り向くと芝崎さんと目が合い、彼女は恥ずかしそうに俯いた。
犬鳴さんはまた違うブランドのコーナーにいるようだ。
そこに並んでいた商品は、芝崎さんのと同じ大きめのサイズのもの。
「か、神瀬くん……来てくれたんですね……」
「う、うん! いいのとか……あった?」
「そうですね……これとかどうでしょうか?」
犬鳴さんが見せてくれたのは、濃い紫色をした下着であった。
芝崎さんのものより胸の形がはっきりしているような構造だ。
体格に合わせてショーツも大きめのサイズである。
「い、いいんじゃないかな。上品な感じで……うん!」
「ありがとうございますっ。あぁ……よかったぁ」
「私……お、お尻も大きいので……その……サイズが合うものが少なくてですね……」
「そ、そうなんだ」
「なので選べる種類が少ないんですけど……安心しました」
まさかお尻の話題が出てくるとは思わず、俺は意識しないように目を閉じる。
「こっちのものでもよかったのですが……」
「……え?」
彼女の声に反応して目を開けると、犬鳴さんはこちらに背を向けて屈んでいた。
そして俺の目に大きな桃尻が飛び込んでくる。
「ちょっ……と……」
「あれ? どうかしましたか?」
「あいやっ、なんでもない!」
「……そうだ、他もちょっと見てくるよ」
「はい、ありがとうございます」
深々とお辞儀する彼女に後ろめたさを感じながら、俺はその場を後にする。
そして次にやって来たコーナーに夜凪さんがいた。
どうやらここは標準的なサイズのものが置いてあるようだ。
デザイン的に、先ほどまでの二人のものより派手に見える。
「おっ、来たんだね……ぐひひっ」
「夜凪さんも……買うの?」
「そうだねぇ……か、神瀬くんが選んでくれるなら」
俺にはこういったものの知識がまったくない。
美的センスもないだろうから、どれを選んでいいのやら謎だ。
パッと目についたのは紺色のもの。
色合い的にも彼女に似合いそうだと思い、手に取る。
しかしその瞬間、それがどういうものかを悟った。
「あ、穴が……」
なんと隠すべき場所が隠れておらず、そこだけ剥き出しになっていたのだ。
なんでこんなデザインのものが高級店っぽい場所にあるんだと驚く。
そんなことを思っていると、その下着をパッと夜凪さんに取られる。
「ちょっ……!」
「ん~? な、なるほど……神瀬くんはそういうのが好きなの~?」
「あ、いや……これは……」
嫌いとは言えない。
「上も下も丸見えになっちゃうねぇ、ぐひひっ。他のところもスケスケだし……」
これを着た夜凪さんを勝手に想像してしまい、顔を熱くする。
「じゃ、じゃあこれで決まりー……ひひっ」
「ちょ、ちょっと待って!」
「待たないよ~。わ、私もこれでいいって思ったんだし。こ、これ着て……部活行くね、お楽しみに……ぐひひひひぃっ!」
本当にこれを着てくるつもりなのだろうか。
いくら見ることはないとはいえ、そんなことを言われてしまえば悶々としてしまう。
「そ、想像した? ひひっ、ファッションショーでもしようか?」
「なっ……!? お、俺! あっち見てくるよ!」
「オッケー、いってらっしゃ~い……んひひっ」
俺はその興奮を誤魔化すようにして、他の二人の元へ小走りで向かったのだった。
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