第40話 終焉へ
その場にたどり着く。猛々しい魔力…ヤツ…【ユピテル】だ。
「よォ…また来たんだな。」
「まあ…そろそろ頃合いかと思ってな。君も性懲りないね、ヒノカグツチ。」
「ハッ、その腕でそんなこと言われてもなぁ。」
「いいんだよ。これで俺たちの目的が達成されるんだから。」
「やはりねぇ…。」
呟く。2ヶ月前までの魔獣の異常は様子見。それからユピテルの襲来は俺を倒せると判断したからだろう。だがそれは誤算であった。故にここ1ヶ月の魔獣の大量発生は消耗作戦と言ったところだろう。
確かに、ここ数ヵ月の探索者の疲労はとんでもない。Aクラスでさえまともに戦えるのが何人残っていることやら。
「今日…始まるんだな。神々による支配ってのが。」
「まあね。俺は時間稼ぎってとこさ。」
「すんなり吐いたな。」
「だってねぇ…準備が整えばこんなもんだよ。」
準備と言うのが引っ掛かる。まあいい…手短に終わらせよう。どうせこいつは今日という日は…逃げられない。被害が出る前に…全て潰す。
「んじゃ、始めるか。」
「余裕そうだね…ヒノカグツチ。」
「まあ…余裕持ってなきゃダメだろ。」
そうして俺は、一気に距離を詰める。
確実に初撃で墜とす。
「【火界】ッ!!」
炎が青く燃え上がる。それをヤツにぶつける。至近距離からの火界。これをまともに受けて立っているとは思えないが…神性持ちなんだよな…。
「ッ…流石に熱い…か。」
「その程度ですむって…どんだけなんだよ。」
あまりにもこのネフィリムというのが強すぎる。
「まあ君も受けてみるといい。」
次の瞬間、俺を雷撃が襲う。強い衝撃は食らえどその程度。
「たかだか…その程度の雷か?」
「君も随分イカれてる側の人間だよ。だけどねぇ…もう、狙いはそっちじゃないんだよ。」
なんて軽口を叩きながら、ヤツは町に雷を落とす。尋常ではない速度と圧倒的な範囲…なるほど、そりゃあ威力に振らなくたって構わないわけだ。
「くっ…。」
流石にそろそろ避難指示は出ただろう。やる他ないわけだ。
「使ってみなよ…アビスってのを…。」
それであれば確かに倒せるかもしれない。倒せるかもしれないが不確定要素が強すぎるのと…ここで放てここが滅びかねない。
天焦であれば本来の阿鼻司よりも威力は押さえれる…だがそれでも疲労は食う…。
やるべきは…世界を守ること…はじめから決めている。どうせ阿鼻司を打つハメになるのであれば、端から全員まとめてやったほうが早い。
拳を握りしめ、魔力を回す。盛る炎…羽を広げヤツの腹に拳を叩き込む。
「がッ…!」
結局はこれに限る。攻撃の余地を与えないほど、殴り続ける。ぶっとばし続ける。
「耐えてみろよ…ユピテル…。」
何度も…何度も…海へ向けそいつを殴り続ける。こっちもそろそろ…本気だ。
羽を広げる。あのときのような…スサノオと対峙した時のような緋色の羽を。魔力消費が激しいこの形態…だが…やるなら今。この一撃にかける。幸いにも気配は感じている。禍々しい海の底からの気配。
「もろとも…焼き払ってやるよ。」
東京湾上空…そこにたどり着く。
「はぁ…はぁ…。」
「よくもまあ耐えれるよ。」
「それが…お前のネフィリムとしての本来の姿か…。」
「まあそんなところだ。さて…東京湾のダンジョンってのはこの辺だったよな?」
「…まさかお前…!」
「まあ…こっちもタイミングを合わせてたって話なだけだ。ちょうどいい緩衝材が2つもある。」
「か、緩衝材って君なぁ…。」
「ごちゃごちゃ言うなら…始めてやるよ。」
目を使う…視える…どこに何ががいるのかが。
一瞬で距離を詰める。全部終わらせてやる。
「【阿鼻司】。」
その状態で放つそれは…以前よりも紅に染まり、熱く、この身を焦がすほどの熱量であった。
一直線に奈落の業火は海野底へと打ち放たれる。目の前のユピテルを捉え、一瞬にしてその海を乾上がらせる。
かつてレヴィアタンと対峙したように、いや、それ以上の範囲が焼け飛んだ。一瞬のそれは、最早爆発であり、何者だろうとどうしようもできないものであると一瞬で印象付けたと聞く。
人の声など聞こえる筈もなく、ただただ轟音が鳴る。稲妻が走る。まさしく、神の一撃。
煌々とした爆心地に1人、その人影はたたずむ。爆炎が晴れ…そこには少年が1人だけであった。
「逃げ足は早いな…あいつ。」
生きていると確信する。そしてもう1つ…その存在も。
「全くもう!熱いじゃないの!!」
乾上がった海底からそいつはこちらを見ていた。確実にダンジョンもろとも吹き飛ばしたと思っていたが…少し狙いが逸れたか?
「こいつが…東京湾のダンジョンのボス…。」
ポツリと呟く。ともかく…ヤツはどこに逃げた?いや、先にこいつを仕留めるべきだ。確実にロックオンされた。
「あれがヒノカグツチ…なかなかやるわね。だけど私もやられっぱなしじゃないんだからね…行けッ!ケートス!!」
いつか見たあの水の球。それが…見たこともない量漂っていた。
「さてさて…こっから本番ってわけだな。」
見立て…後10分でこの世界の命運は決まると言っていい。
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