第37話 足手まとい
ネフィリム【ユピテル(仮称)】の襲撃から1週間が経過した。ダンジョン外ではまあなんとも平和な日々が続いている。いいことだ。
もっとも、ダンジョン内は混沌に満ち溢れていた。明らかにおかしい量の魔獣達。Aクラスが相当量出払っていると言うのに、それでも対処しきれないほど。
やがてBクラスにもその弊害は及ぶこととなった。
かく言う俺も、ヒノカグツチとしてこき使われている。まあ…最悪ダンジョン如くぶっ壊したっていい。いいけどたぶん駄目なんだよなぁ。偉い人にしこたま怒られそう。
「ふぅ…殲滅完了。」
転がった魔石の山に座る。こんなん地獄の王だろ。だけどたぶん…これからもっと地獄になる。
「神々ねぇ…随分と壮大なお話だこと。」
億劫になってなどいられない。東京湾のダンジョン…その奥に眠る神とやらを倒さねばならんのだ。さて、何が出てくることやら。
そのとき、携帯が鳴る。発信元を見れば、美海さんからであった。
『あ、もしもし勇太くん。また魔獣の大量発生だよ。』
「またですかぁ…?」
『気持ちはわかるけど…こっちもこっちで犯人捕まえようとはしてるからさ?』
「あんなの…捕まえれるわけないじゃないですか。」
犯人と言われふと目に浮かぶのはあの老人。ネフィリム【ユピテル】。ありゃ駄目だろう。Sクラスが束になってやっとだろう。
『まあ…ともかくこの混乱…もうすぐことが起こるって言うのは簡単に推察できる…稼ぎ時なんだからよろしくね?』
「怖いこと言いますね。美海さんも…。」
そう言って通話を切る。送られてきたダンジョンの情報を元にその場所へと向かう。そもそも、稼ぎ時って言ったってこうもあちこちに行かされるんじゃ魔石拾う間もねぇし…。
そう言うわけでやってきたのが渋谷のダンジョン。
「あぁ…またここかぁ…。」
なんてぼやいてそのダンジョンに入る。現状、ダンジョンに許可なく入れるのはAクラス、及び指令を受けたBクラス。そして俺だけだ。真島さん達が他の探索者とは出くわさないように調整はしてくれているので安心だとは思うが…イレギュラーっているもんだから油断はできない。
そうして、そのダンジョンのなかに突入する。
「うへぇ…こんなに湧くもんかね…ゴブリンって。」
あのじじい何しやがった。てか、なにならこんな芸当ができる?全くもって見当がつかん。
何はともあれ炎を纏い群衆に突っ込む。そう、最悪これですむのが俺の楽ところだ。
「マジで…下層までぶち抜いてやろうか…。」
量が多すぎる。面倒くさくてかなわねぇ。そもそもこれで今日は何件目だ?そんなことも覚えていない。
明らかに現状はおかしい。
「たかだかゴブリンどもがよぉ…。」
ゆっくりと熱を放ちながら進む。下層へと…。1匹たりとも残すことはできない。まあ残らんだろうがな。
煌々と盛る炎が周囲を焼き尽くす。
やつも消耗戦に出たのだろう。そんでこっちが疲弊しきったところを一気に神が襲うってとこだろうな。くだらねぇ話だ。いっそ…俺がダンジョンごと潰せば…いや、潰せるか?ダンジョンごと神を…。ピンポイントでぶち抜けたとして俺の脳内回路焼き切れてそうだな。
そんな考え事をしながら、ゴブリンどもを殲滅する。
結果として12階層までゴブリンが湧いてやがった。いやぁ…最悪だね。この量のゴブリンとか。Aクラスでも消耗を余儀なくされただろう。
「はぁ…しんど…。」
流石にこの件数は疲れた。そんな疲れか…気配の探知がおざなりになっていたようだ。
「あ、あんたは…。」
背後からそんな声が聞こえてきた。
「…は?」
なんで人間がここに?と、言うか聞き覚えのある声。てか俺今炎纏ってるし。完全にこれはやっちまった気がする。いやいや、と言うか上の管理はどうなってるんだ?なんでこいつがいる?
「相葉…。」
「ひ、日野…。」
こいつと出くわすとは災難だ。炎で身を包んだとて、流石にこの距離ならバレる。怠惰だった。
「なんであんたがここに…。」
どうする…もういっそこいつになら正体を明かしてもいいのかもしれない。まあ、大層ヒノカグツチのことを嫌っているようではあるが。それでもまあ、真っ向から叩きのめせば格の違いくらいバカでもわかるか。
「それはこっちの台詞ですよ。なんで君がいるんです?Cクラスでしょ?」
「そりゃ…ここのダンジョンでBクラスが戦っているって言うから来てみたら。」
「…あんた…本当に綺麗事が好きなんだな。」
「な、なによ?」
「ここは12階層までゴブリンで埋め尽くされていた。あんた1人でどうこうできるような問題じゃねぇんだよ。」
「でもいないよりかはマシでしょ?大体なんであんたがいるのよ!?Fクラスの癖に。」
「足手まといなんだよ。弱いやつが1人加わるって言うのは。」
「足手まといって…そもそもあんたは…一体…。」
「俺に勝ったら認めてやるよ…相葉…あんたが来る意味があったってな。」
とりあえず…こいつとは今後距離をとらなきゃいけない。あと…どうせ口封じもしなきゃいけないからギルドに連行する必要がある。
炎は盛る。
「あ、あんた…まさか…!?」
「あんたがお探しのヒノカグツチってのは…俺のことだよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます