第35話 神々

 突如として学校上空に現れたその男。交戦してみて思ったがやはり、レヴィアタンほどの力がある。


「原初の星…神々が支配していた地上…そんなことして何をしたいんだが…。」


「これでも、俺たちには目標があるもんでな。」


「ロクでもねぇことは割れてる。その前に俺が叩き潰してやるだけだよ。」


「ほう…やってみろ…と言いたいが、君だけだよ。唯一の障壁と言うのは。」


「やはり、俺を殺さないことにはてめぇらは好き勝手動けねぇってことだ。」


「まあ、要はそう言うことさ。君の力は常軌を逸している。」


「んじゃ、とっととくたばっちゃくれねぇか?」


 そうして、炎の出力を上げる。この阿鼻司アビス。正直、調整が難しすぎるゆえに全力でぶつけたことは無い。だいたいその前に集中が途切れてしまうからだ。だが、今ならもう少し強くなれる。

 師匠が俺に力を貸してくれてる。

 そのまま、やつに突っ込む。結局俺の戦闘は肉弾戦がメイン。精度は上がっていると言えどここいら一帯を吹き飛ばしかねんのは事実だ。やるならもっと上空でやらねば。

 やつの腹部に拳を突き刺す。そのまま上昇していく。


「くっ…!!」


「神々だかなんだかは知らねぇが…俺の大切なモンに手ェ出すんなら許さねぇ。」


 1度死んでよく解った。無力に何かを失うかもしれない恐怖。俺がやるべきことなら…やる。


 雲を突き抜け…尚も上昇する。この辺なら被害もあまりでないだろう。


「はぁ…はぁ…君…なんで普通に呼吸できてるんだい…?」


「似たような言葉返すが、なんでこれに耐えれる。」


 本来ならば情報を集めなければ行けない。だが、こいつを生け捕りと言うのは常識的に考えて出来ない。


「君と同族だからね…。」


「ああ、そうかい。」


 師匠曰く、俺の炎は神性さえぶち抜くらしい。


「【阿鼻司アビス天焦てんしょう】」


 体感、阿鼻司アビスの力を3割程引き出したその詠唱。揺らめく炎は天を引き裂く。急激に上昇する気温。辺りが一気にプラズマ化する。


「―――――!!」


  後に聞いたところ。それは地上でも観測できたようで、太陽が2つ現れたと表現されるほどであった。

 周囲を巻き込んだ爆発はやつの姿を完全に捉えた。

 ―――――と思ったのだが、爆風が晴れてもやつの姿はない。塵も残さず消し飛ばしたかと思案するが…気配が完全に消えたわけではない。どこかに消えた…それがどこだかわからない。


「やはり…君と言う人物は危険だ…。」


 その声だけはっきりと聞こえた。やはり、まだ生きている。ユピテル…神の名を、やつも語っていた。神々ってのは…こうも面倒くさいものなのだろうか。


――――――――――


 ―――――数時間後、東京湾のダンジョン。


「な!どうしたの!?」


 俺は、その神の元を訪れていた。海神、アムピトリテ。それが彼女の名前である。

 ヒノカグツチ…完全に誤算であった。あまりにもやつは強すぎる。とっさにユピテルの力で障壁を張り、その場を離脱したものの右腕を1本持っていかれた。


「いやぁ、ヒノカグツチにねぇ…。」


「またヒノカグツチ?私のスサノオも殺されちゃったし…もう!そいつ何なのよ!!」


「俺とおんなじですよ…ネフィリム。神の力を持った子です。」


「ネフィリム…私たちの敵に肩入れするような神何てどこに…いやぁ、あの物好きのオッサンならいたわね…。」


「肉弾戦でも、魔法でもこの様ですよ…当初スサノオを臆病だと見くびっていましたが…彼は正しかった。ああでもしないと倒せませんね。あれ。」


「そんな人間存在していいの…?」


「駄目だから困ってるんですよねぇ…我々の目的を邪魔する側の人間なのでなおのこと。」


「もう直接私が乗り込もうかしら。」


「それだけはやめておいたほうがよろしいかと…。」


「なんで?」


「何でってそりゃあ…海を敵に回したくはないもので…。」


 流石に彼女単体で暴れてもらってはこちらが困る。まだあとお三方の準備が整っていないのだ。やるならその時である。


 しかし、逆に考えるとそうなってさえしまえばヒノカグツチを倒す算段もとれる。

 神性を打ち破る炎があると言えど、4柱の神を同時に相手取るのは流石にきついだろう…きついよね?

 とりあえず、きつくあってほしい。まあ名を残すような神々ばかりだ。1、人間にどうこう出来た話ではないだろう。


「まあ、いいけど。報告は感謝するわ。それより、その腕どうするの?」


「まあ、この程度であれば1週間ほどいただければそれで。他の方々にも準備は進んでいると報告をしてまいろうかと。」


「あなたも大概人間やめてるわね。ユピテルに見初められただけあるわよね。」


「見初められたなんてそんな…俺はただ探索者をしていただけですので。」


「神に見初められるなんて大したものだと思うわよ?ネフィリムになったのならわかるでしょ?」


「まあ…そうと言えばそうですが。」


「なかなか出会えないものね。そう言う本当に強い人って。スサノオも…生きててくれたらな。」


「彼であれば…俺を越していたかもしれませんしな。」


「ほんと惜しいわよ。」


 口では平静を装っているが、その拳は固く握られている。やはり、失ったものがものだけに悔しいだろうに。スサノオは彼女にとって我が子同然であったのだから。


―――――――――――――――

あとがき

どもどもご無沙汰してます。作者の『烏の人』です。

 先に申し上げておくと更新頻度についてのお知らせになります。前話まで極力毎日投稿しておりましたが、今回間が空いた理由ですね。別にネガティブな話じゃないです。

 活動報告にも書いたのですが端的に自分、カクヨムコンテストに出ようと思いましてそれ用の作品を執筆しているためです。よって、週一くらいまで頻度が落ちますがどうかご容赦ください。

 この作品も気長に続けていきますんでどうか見守っていただけると幸いです。では、また次回!

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