第33話 目的
ソファでは、今日出会った相葉が寝ている。一方で俺は自室に籠り、情報を整理していた。
曰く、佐々木さんがその場に到着したときには俺たちが目撃したローブの男は居らずレベル5指定魔獣、サイクロプスが居たと。そいつからは魔石が2つ取れたとのことだったので…今回の騒動、このローブの男が絡んでくることは間違いない。
「つーか…なんだったんだよあの力量。」
俺はこの目を獲得したことにより、相手の力量を計れるようになったのだがあのローブの男は軽く見積もってもレヴィアタンクラスだ。つまり、レベル7相当。なんであんなんが出歩いてんだよ。いや…でも待てよ。俺の存在も海外には知られていない。その事から考えたら、俺みたいな奴がたまたまもう1人居て、それがたまたま来日して、それがたまたまあのダンジョンに…んなことあるか!
こんなんが何匹も居たらそれはもう世界の終わり。
ただでさえ大変だってのに、面倒事を増やしてくれる。どうせ、あの男のことを対処できるのは俺だけだろう。
「ったく…どうしろって言うんだか。」
まあ、やるときはやるしかないわけだ。
しかしながら…目的が解らない。ローブの男は何を企んでいる?俺の抹殺か?それともただただ混乱を招きたいだけ…或いは宣戦布告…。
嫌だな。と、言うか魔獣兵器とかそんなもの存在していいのか?いや、仮にそんなものがあったらもう町中にばらまかれているか。
こうとも考えられる。ダンジョンでしか作動しない兵器だと。
思い出してみればスサノオのばらまいていたあの指輪…あれだって魔獣兵器じゃないか。
だいたい、大型魔獣になってくるとその巨体を保つためにダンジョン内の魔力を利用している奴がほとんどだ。ま、例外もあるが。そいつらが浅い層で難なく活動できていることそれ事態が脅威なのだ。
そう考えれば…一枚岩ではないようにも感じる。きな臭くなってきた。そもそもあんなもん野放しにすんなって話だ。
「今日はもう寝るか…。」
考えても埒が明かない。どうにしたって、後手の対応に回るしかないのかもしれない。
どっかがぶっ壊れてからじゃ遅いってのに。
そうして、俺の意識は落ちようとして…部屋に響いたノックでまたこちら側に戻された。
「…なんだ?」
「ちょっと、入ってもいい?」
「…まあ、構わんが。」
そう言うと、脚を引きずりながら相葉が入ってきた。
「まだ安静にしとけ。治らんだろう。」
「どっちにしたって今日明日で治るようなもんじゃないでしょ。」
「痛むなら休ませとけって話だ。そんでどうした?」
「いや、その…色々とありがと…。」
「だけか?」
「だけって…あんたねぇ!」
「いや、何て言うか態度の割りに律儀だなぁと。」
「態度の割りって何よ!態度の割りって!」
「まあ、いいですよ。いま、相葉さんが生きているならそれで。」
最悪、俺が居たらどうにかはなる。なるが…こいつヒノカグツチを知ってるみたいだしどうしたものか。
「なんか…調子狂うわね…。」
「すみません。でも、守れたなら良かったなって。」
「かっ、格下のあんたに守られたとかそんなの全然無いから!!」
そうして無理に振り返ろうとして―――――。
「っ…!?」
どうにか間に合う。バランスを崩した彼女を支える。
「だから無理しないでとあれほど。」
「ご、ごめんなさい…。」
これ程…自分を強く見せたい人もそう居ないだろう。
「あんた…やっぱりFクラスの癖にタフよね…。」
「男子の探索者ってなったらだいたいこうですよ。いくらFクラスと言えど、身体能力は普通の人より上です。」
「そ、そっか…。」
んなことは多分ない。こいつが無知で助かった。正直…本気だしたら今の俺には相手の次の行動が解る。Fクラスと偽るのにも無理が出てきた。ここまで来たら真面目に昇級考えたほうがカモフラージュにもなるんじゃないだろうか?
本当に紛れるんだったらそれこそ1番多いDクラス辺りか…流石に日常生活に支障をきたし始めているからな。
まあそのうち考えておこう。
「んじゃ…とりあえず、ソファまで送りますよ。」
「う、うん…。」
何て言うか、昼とは打って変わって口数が少ないな、何て思っていると予想外の言葉が飛んでくる。
「なんか…あんた変に女性慣れしてない…?」
「…そうなの?」
盲点。自分でも気がつかなかった。
「いや、そうでしょ!?もうちょっとキョドったりしてくれたっていいんだよ!?」
あれ?なんで望まれた?
「いやまあ…確かに今まで接することは多かったですけど…。」
幼少期は施設に居たし、一時期は美海さんと住んでたりもした。それ以外はダンジョンに放り込まれたり…お節介に絡まれたり?
「え…あんたもしかして…。」
「変な妄想しないでください。肉体関係持ったことなんて一度もないですよ。」
「ちょ、そこまで言ってないじゃない!」
この人…読めねぇな。
「まあ、こんなんですからそう言うのにも興味ないんですけど。」
「…えぇ…思春期の男子それでいいの…?」
思春期の男子、何回か世界救ってるからそれでいいと思ってるの。
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