第19話 帰りを待つ者

炎の魔神について語るスレ156


032 名無しの魔神

ついに現れたな


033 名無しの魔神

これもうレベル7指定やろ


034 名無しの魔神

衛星写真みてみたけどこれは流石に草

そりゃ討伐隊も逃げ出すわな


035 名無しの魔神

ギルド的にはどうしていくんやろ

確かスサノオ?みたいなんも出てきたんやなかったか?


036 名無しの魔神

絹井町とか言う化物が集まる魔境


037 名無しの魔神

これがマジで笑い事じゃないんよな


038 名無しの魔神

てかこれ炎の魔神がダンジョンから出てるっていうのに目撃例全く無くね?


039 名無しの魔神

上位の精霊やったら自由自在に消えたり現れたりできるらしいで


040 名無しの魔神

人語理解してる時点でもうお察しなんだよなぁ


041 名無しの魔神

そういやあれとおんなじ日にヤマタノオロチみたいな魔獣が現れたって聞いたんやが


042 名無しの魔神

あれな

ヒロキの配信に写ってた奴


043 名無しの魔神

あれってなんか関係あるんやろか?


044 名無しの魔神

あれが関係あるとしたらスサノオの方やろ


045 名無しの魔神

スサノオか…

あいつもわけわからんよな

何したいか謎すぎ


046 名無しの魔神

どっかのイキった探索者やろ


047 名無しの魔神

それはない

ガチで職員が殺される事件起きとる


048 名無しの魔神

物騒やな


049 名無しの魔神

やっぱり…スサノオの言ってたヒノカグツチってのが炎の魔神っていう線が濃厚になってきたな


050 名無しの魔神

確かにタイミング的にもそれっぽいな

ここ最近で炎を使うような奴もおらんし


051 名無しの魔神

流石に無いやろ

そんなことがあるんやとしたらそれはもうレベル7とレベル6同士の戦いってことになるで?


052 名無しの魔神

それが今回のだったりせんか?

こんな地形変わることそうそう無いで?

それに今までおとなしかった炎の魔神が急に暴れる意味もわからんし


053 名無しの魔神

何かありそうな話しになってきたな


054 名無しの魔神

ちょっとそれやったらもう怖すぎるんやが…

何ができるっていうんや…


055 名無しの魔神

なんもできんやろ

たぶんあれはSクラスパーティーが成り立って初めてどうこうできるもんや

今の人類にはどうにもできん


056 炎の魔神はザコ

んなこたぁない

炎の魔神とか言われてるけどあんなんただの人間だし

私でも勝てる


057 名無しの魔神

今日も湧いてんねぇ


058 名無しの魔神

荒らしなら帰れ


059 炎の魔神はザコ

だって事実なんだもん

私の方が強い

外国の討伐隊とかも口だけだったし私が倒して英雄になったっていい


060 名無しの魔神

はいはい、ならとっとと倒してきましょうね


061 名無しの魔神

流石に幼稚な妄想が過ぎる

あれが人間なわけない


062 名無しの魔神

百歩譲って人間でもお前が勝てるわけないだろ


063 炎の魔神はザコ

私は最強だから


064 名無しの魔神

さむ…


065 名無しの魔神

久しぶりに本物みた気がするわ


――――――――――


 絹井のギルド。そこの受付に座ってみる。スマホを弄ってみると、炎の魔神やヒノカグツチ、スサノオの考察や今回の件での被害のことでもちきりであった。ネットニュース、スレッド、動画…やはりそれだけ凄まじかったのだ。


 今日は誰も来ないのは知っている。現在この町は被災地となっている。先日、勇太くんがそれはそれは派手に暴れたみたいでこの辺でも火事の報告がちらほら上がっている。

 あの海岸沿いから10km以上離れているのにこの様だ。勇太くんはそれに値する何かと戦っていたことになる。


「…強いなぁ…。」


 なんて言葉をこぼす。


 世界で1番強い探索者。日野 勇太。彼と私が初めて会ったのは、今から13年前になる。彼が4歳、私が14歳の時だった。あの時の衝撃は忘れられない。


 ギルド運営の孤児院。そこは魔力を上手く扱えないせいで親の手に負えなくなったような子供が集まる場所。そこで、私と勇太くんは出会った。

 その頃の勇太くんは自分の力を使うことに後ろ向きであった。生まれながらにしてその力の強大さをわかっていたのだ。


 何より、笑顔が子供らしく無い。それが私が勇太くんに抱いた感想である。


 あの頃から勇太くんは独りであった。誰も手が出せない存在。誰も、声をかけてあげられない存在。そんな中、手をさしのべたのが真島さんだった。

 まあ手をさしのべると言うよりも…英才教育…。


 まさかダンジョンに放り込んで修行させるなんて誰も思ってなかった。スパルタが過ぎると誰もが思った。だけど実際はそんなことなかった。

 いつも、勇太くんは帰ってきていた。


 今になって気がつく。あのときから真島さんは有事に備えて勇太くんを育てていたのだと。己の力を飲まれないようにしていたのだと。


 それが功を奏し、今日という日がある。勇太くんは見事、この国を守ってくれた。


「あぁ、早く帰ってきてくれないかな…。」


 ここ数日、勇太くんはギルド本部に居る。例の戦いについての事情聴取、そして今後の対策の重要参考人だそうだ。そして今日、帰ってくる予定である。


 受付でぐったりと伸びていると足音が聞こえた。


「勇太くん、おかえ…あれ…?」


 そこに立っていたのは勇太くんではなかった。


西!!いったい今までどこに…!!」


 見慣れた少女。西山 桃華の姿だった。ここ数日行方不明だった為、心配していたのだが…まさかこんなすんなり現れるとは。


「すみませんね。ちょっと―――――。」


 いや、なにかが違う。


 声の弾み方…歩き方、目線、所作…全てが絶妙に違う。

 彼女の手には水が集まっていく…やがてそれは形を成し…刀のように彼女は構えた。


「道に迷ってて…。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る